性的同意の定義や方法とは?海外との違いや性交渉において気をつけたいことを解説
性的同意とは、何のこと?よく聞かれるようになったこの言葉の、詳しい定義をご紹介。同意が成立することの基準や、陥りがちな曖昧な判断についてもチェックしていきましょう。日本は海外との違いも大きいと言われているので、ぜひ併せてご覧ください。
性的同意の定義とは?押さえておきたいポイントも
性行為に関する同意のこと
性的同意とは、性行為に関する同意のこと。セクシュアル・コンセント(Sexual Concent)とも呼ばれ、『性的な行為の前に相手から明確な了承を得る』ことを定義します。何となくといった曖昧な状態ではなく、言葉ではっきりと了承を得ることを指します。
定義で示されている「性的な行為」には、性交渉だけでなく、ハグやキスといった行為も含まれます。お互いが行為を積極的に望んでいることを確認するのは、大切なことなのです。
- 性交渉(肛門性交・口腔性交も含む)
- キスやボディタッチ
- 手を繋ぐ・腕を組む・ハグをするなどの接触
- 性的な話・プライベートな話題に触れる
同意がなければ"性暴力"
性的同意において、同意のない性行為は性暴力と考えられています。性的同意に関する定義が明確になってきたのは1990年代に入ってからのこと。たとえ、「ノリで抱きついただけ」と軽い気持ちで考えていても、同意していない相手にとっては苦痛になる可能性があります。
ヨーロッパを始めとした海外では、同意なき性交を罰則化する動きも。性的同意の定義を意識して行動していくことは、これからの社会にとって大切なこととなります。
「同意なき性交」は犯罪 世界の流れにスイスは?カップルや夫婦間でも必要
性的同意の定義は、カップルや夫婦間でも当てはまります。性交渉をすることが当然と思われる関係でも、互いの同意を得ることは重要です。カップルや夫婦間で性的行為を拒むことは難しいと捉えられがち。しかし、一方だけが我慢を強いられるのは、様々な問題に繋がる可能性が。
円満なカップルや夫婦としての関係が築きにくくなったり、ストレスを感じてしまったりするケースなどが見られます。定義を難しいものとは考えず、パートナーとの関係性を築く上で必要なこととして覚えておきましょう。
性的同意が必要とされる理由は?
思い込みによる性行為の防止のため
性的同意が必要とされる理由には、思い込みによる性行為の防止が含まれます。性行為に関するトラブルの中で、特定の行動が「暗黙の了解」や「OKサイン」だと思われて、性行為に至るというケースはよく見られます。
「誘ったときに『嫌』と言われなかったからOKだと思った」や、「『嫌』『やめて』という発言はOKサイン。逃げ出さなかったから同意していると思った」といった勝手な解釈で性行為に至ることが。
本当は嫌だったのに受け入れてしまったケースとしても、「相手が不機嫌になると思った」や「断ると面倒なことになると思った」などの事例が挙げられます。定義に示されているように『性的な行為の前に相手から明確な了承を得る』ことは、思い込みによる不本意な性行為の防止に繋がると考えられています。
朝日新聞デジタル 性的同意とは?性暴力の抑制のため
性暴力の抑制のためにも、性的同意は必要だと考えられています。とくに注意したいのは、定義を知らないことで、無意識のうちに性暴力を奮っているケース。同意がない性的な行為は、すべて性暴力となります。しかし、「これぐらいなら問題ないだろう」という意識から、知らずに加害者になる人も少なくありません。
また、「本気で抵抗しなかったから自己責任」、「思わせぶりな行動をするから悪い」、「本人が軽率だった」と、心無い言葉で性暴力の被害者を責める人もいます。セカンドレイプとも呼ばれ、さらなる性暴力になることも。
望まない性行為を強いられるのは、どんな状態であっても許されることではありません。性的同意が成立する基準を広く理解してもらうことは、性暴力の抑制に繋がります。
お互いの尊重のため
性的同意は、互いを尊重するためにも必要です。性的同意を必要とするのは、女性だけではありません。男性にとっても必要です。たとえカップルや夫婦であっても、「疲れているからセックスをせずに寝たい」「妊活だから仕方なく応じている」と男性側が感じることも。
性行為に意欲的になるかどうかは、個人差もタイミングも関わってくる問題。互いを尊重し、対等な関係を築くためにも、性的同意が行われることは大切です。
性的同意が成立する基準
基準①4つのイエスが揃っていること
性的同意が成立する基準として、4つのYESが揃っていることが挙げられます。4つのYESは、「相手」「時」「場所」「方法」という点で、言葉で明確に同意が得られている状態のこと。当然、カップルや夫婦間においても適用されます。難しい基準と言われることもありますが、必要なことです。
例えば、「あなたとは性的な行為をしたくない」となれば、「相手」に関するYESが得られていない状態です。「今日は嫌」という気持ちであれば「時」が、「ここでは嫌」となれば「場所」におけるYESがありません。また、「避妊しないなら嫌」や「そんな行為はしたくない」であれば「方法」でNG。
4つのYESのうち、どれか一つでも得られていなければ、カップルや夫婦であっても性的同意は成立しないと考えましょう。後々、性暴力のような問題に発展させたいために押さえておくことは大切です。YESの取り方が難しいと思った場合は、性的同意のチェックリストを使った方法も活用してみましょう。
性的同意を得るために必要な"YES"
「相手」「時」「場所」「方法」の4つで同意を得る必要がある。
基準②同意の取り方のポイントが押さえられていること
性的同意が成立するには、同意の取り方のポイントが押さえられている必要もあります。「相手・時・場所・方法」という4つのYESだけでは、不十分なのですね。たとえ相手が「YES」と答えていても、「YES以外の答えを許してくれない」や「上下関係があって逆らえない」といった理由から言っている可能性も。
同意の取り方のポイントとして、「非強制性・対等性・非維持性」という条件も揃っていなければいけません。1つ目の取り方のポイントとなる「非強制性」は、「NO」と言える環境が整っていることを意味します。プレッシャーがあったり、お酒や薬の影響でNOと言えなかったりする状態は環境が整っているとは言えません。
2つ目の取り方のポイントとなる「対等性」は、社会的な地位や力関係に左右されない関係であることを意味します。上司や先輩という立場を利用して「NO」と言うと不利益を与える関係は、断るのが難しい状況になるため対等性に欠けますね。
3つ目の「非持続性」は、一つの行為に同意しても、次回もOKというわけでも他の行為に同意したわけでもないことを指します。一度手を繋いでも、次回もOKとは限らないし、キスもOKというわけではありません。都度・段階ごとに同意を得る必要が。以下の動画は、性的同意についての分かりやすい説明として話題になった、紅茶を例にしたものになります。同意の取り方のポイントをしっかり押さえてくださいね。
- 非強制性:NOと言える環境が整っていること
- 対等性:対等な関係として同意を求めること
- 非持続性:都度・段階ごとの確認をすること
基準③性的同意年齢に達していること
性的同意が成立する基準には、互いに性的同意年齢に達していることも挙げられます。性的同意年齢とは、性的な行為に対する同意能力があるとみなされる年齢のこと。4つのYESや、同意の取り方のポイントが押さえられていても、同意能力がないとみなされる年齢では成立しません。
性的同意年齢は、国によって様々。日本と海外では大きな開きも見られます。海外との意識の差を知るために、以下でも紹介しておりますので、是非確認してみてください。
海外と日本における性的同意の違い
違い①性的同意年齢
海外と日本における性的同意では、まず同意年齢に違いがあります。日本の場合は13歳と、同意能力があるとは言い切れない難しい年齢。明治時代に定められたものが、110年以上改正されないまま継続していると言われています。当時と現代では社会的な事情も全く異なるため、同意年齢が低いことが問題視されています。
海外においては、性的同意年齢は国ごとに異なります。比較的低いのが、ドイツやオーストリアなどです。高めになるのが、イギリス・カナダ・韓国・フィリピン・アメリカの一部など。海外では、未成年への性交渉や性暴力をきっかけに、性的同意年齢を引き上げる動きも顕著となっています。
13歳 | 日本 |
14歳 | オーストリア・ドイツ |
15歳 | フランス・スウェーデン |
16歳 | イギリス・カナダ・韓国・フィリピン |
17歳 | アメリカ(ニューヨーク州) |
18歳 | アメリカ(カリフォルニア州) |
違い②罰則に対する意識
海外と日本では、性的同意が行われなかった場合の、罰則に対する意識にも違いが見られます。日本では、「暴行・脅迫」が用いられた場合でなければ、犯罪とするには難しいと言われています。例えば、相手が怖くて「NO」と言えず、不同意な性交渉が行われても問題ないとする傾向に。
しかし、海外では性的同意が行われない性交渉を犯罪とする動きが増えています。例を挙げると、ドイツやスウェーデン、オーストリアなどですね。ただし、同意の規定の仕方や判断の方法に苦心しているという側面も。日本でも同じ流れが生まれる場合、避けて通れない問題になると考えられています。
朝日新聞デジタル 性的同意とは?違い③性教育の方法
性的同意に関する性教育の方法にも、海外と日本では違いがあります。日本における性教育は、まだまだ未発達。性に関する事柄をタブー視する傾向があるうえに、学習指導要綱においても性交渉や避妊方法といった内容は教えないと定められています。そのため、性的同意に関する教育も難しいものになり、遅れがちという問題が。
性教育先進国と言われる海外の国では、小学生の段階から性的同意に関する性教育を取り入れていることも珍しくありません。同意の重要性や取り方の方法など、早い段階から教えられるのです。
日本では、性交渉に関することを小・中学生で取り扱うことを問題視する声が見られます。しかし、性教育が充実している国ほど、初体験の平均年齢も遅く、10代の出産率が低いという結果も。互いの意思を尊重するという土台が作られることは、とても大切だと考えられています。
NHK 変わるか日本の“性教育” 少年少女にセックスを教えても、エッチをしない国オランダの謎!〜第1回 オランダの性教育の成果〜性交渉において気をつけたいこと
自分の気持ちを把握すること
性交渉において気をつけたいのは、自分の気持ちを把握すること。はっきりと「したい・したくない」と自覚していれば良いのですが、人によっては「したいかどうか良く分からない」という難しい状況にあることも。
良く分からないということは、どこかで納得しきれていない可能性が。行為を急ぐ必要はないので、「心の準備ができていない」や「良く分からないからしない」といった言葉でお断りしましょう。
「良く分からない」という自分の気持ちを把握しておくのも大切なこと。カップルや夫婦間であっても戸惑ったりすることは珍しくありません。
NO=嫌いではないことを理解すること
性交渉でNOと言っても、必ずしも嫌いという意味にはなりません。性行為の途中で気が変わるのはおかしくないことや、性的な反応を見せることが愛情の深さを表すわけでないことも理解しておきましょう。
そのため、誘って断られても傷つく必要はありませんし、断るのは相手に申し訳ないと感じる必要もありません。愛情がないからNOと言っているとは限らないと、お互いに理解しておくことは大切です。カップルや夫婦も含めて、互いの意思を確認し、対等な関係で性交渉ができることを意識していきましょう。
性的同意を当たり前のことに
性的同意に対する理解の広がりは、まだまだ始まったばかり。同意とは程遠い「暗黙の了解」や「OKサイン」の勘違いなどが原因で、不本意な性的行為が多く見られる状況です。
性的同意が行えることは、身を守るうえでも、パートナーと良い関係を築くうえでも大切なこと。広く普及するほど、当たり前のこととして性的同意が行われやすくなるので、できるだけ意識していきましょう。
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