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女の子に適切な教育による未来を!「国際ガールズ・デー」に考えたいウガンダの女の子が直面する課題
10月10日は「国際ガールズ・デー」。「女の子の権利」や、「女の子のエンパワーメント」の促進を広く社会に呼びかける日として、国連に定められました。今回は、ウガンダとケニアで取り残された子どもたちを支援する国際協力NGO「エイズ孤児支援NGO・PLAS」で活動する小島美緒さんに、ウガンダの女の子が直面している課題について伺いました。
2021.12.15公開
まずは、データからウガンダの女の子の実情を知っていきましょう。
ウガンダは、東アフリカの赤道直下に位置する内陸国。ケニア、ルワンダ、コンゴ民主共和国、タンザニアと隣接しています。
ユニセフが発表している子供白書2019によると、2018年時点での人口は約4,273万人。そのうち、18歳未満の子どもの人口が2,300万人と、人口の半数以上にも及びます。世界の中でも貧困問題を抱えている国の一つのウガンダでは、子ども達、とりわけ女の子の権利に関してはさまざまな問題を抱えているのです。
例えば、2010年から2017年において後期中等教育レベル(後期中等教育を修了した25歳以上の人口)は男性は14%、女性はその半分にも満たない6%です。※1
また、2012年から2018年における児童婚の割合は、15歳までに結婚した女の子が7%、18歳までに結婚した女の子だと34%にも及びます。※2
社会問題と言われたHIV感染についても、2018年の感染者数は、0〜14歳の子どもで10万人、10〜19歳の女の子が54,000人と高い数値が続いています。
データを読み解くだけで、ウガンダの女の子が教育においても、人生計画においても厳しい環境に置かれていることが分かるのではないでしょうか。
※1ユニセフ – 世界子供白書2019_表16女性の経済的活動を促す指標
※2ユニセフ – 世界子供白書2019_表11子どもの養護指標
次にウガンダが抱える3つの問題について知っていきましょう。
ウガンダの社会問題の1つとも言われているHIV感染。先ほどのデータで、0〜14歳の子どもで10万人、10〜19歳の女の子が54,000人と書きましたが、小島さんによるとその中には母子感染も含まれているそう。
ただ、ウガンダには母子感染予防プログラムがあり、出産前にクリニックに行って母子感染を防ぐための薬を処方してもらったり、母乳ではなく粉ミルクで育てるよう教えてもらったりと、感染しないための取り組みを学ぶべます。この取り組みを行うことで、赤ちゃんの感染リスクを3%未満に抑えることができるそうです。
しかし、ウガンダの国内でも地域格差、経済格差があります。この取り組みを受けることができないママもたくさんいるのが現実。そして母子感染のまま生まれた赤ちゃんは、その約半数が2歳の誕生日を迎えることができないそう。なかには10代まで生きる子どももいますが、HIV感染はまだまだウガンダの社会問題と言えそうです。
そして、HIV感染の1つの要因とも言えるのが児童婚。児童婚が要因となり、性的虐待、婚前での性交渉によるHIV感染、望まない妊娠に繋がっているケースがまだまだ多いそう。
また、貧困家庭に生まれた女の子は、学校に通い続けるための学費を親が捻出できずに教育を諦めるケースもあります。
ウガンダは義務教育なので授業料は無償。しかし、教材費、教科書代、制服代などの学用品費、進級するためのテスト代などが支払えなくなるという問題に直面します。そうすると、日本で言う援助交際がウガンダでも行われているとのこと。
“Sugar Daddy”と呼ばれる、お金をくれる年上の男性と性交渉をしてお金を得て、学校に通わざるを得ない女の子がたくさんいるそう。もちろん、そこには児童婚への繋がり、HIV感染や望まない妊娠のリスクが存在しています。
そして児童婚の問題の1つは、若くして妊娠して子どもを産むこと。例えば、小島さんが所属するエイズ孤児支援NGO・PLAS が支援しているウガンダのルウェロ県では年間に1,400件の若年出産が発生しているとのことです。
このように、女の子の貧困、そして教育と児童婚、早期性交渉、早期妊娠は密接に関係しています。早期妊娠した女の子の3分の2が中退せざるを得ず、中等教育を修了できないという現実があるのです。
それでは、ウガンダでは子どもたち、女の子たちに対して性教育が行われていないのかというとそういうわけではありません。
2018年、ウガンダでの文科省に当たる教育を司る行政によって、新しい性教育のカリキュラムが発表されました。そのカリキュラムは「National Sexuality Education Framework」といい、小島さんのお話によると、比較的充実している性教育カリキュラムだそう。
まず、性教育は3歳からスタート。最初は、水着で隠れる場所、つまりプライベートパーツに関する話をします。
6〜8歳では、自分が嫌だと思うボディタッチをされない権利について。そして、9歳では思春期に突入することを鑑み、それぞれの体の変化や早期の性交渉によるHIVや性感染症などのリスクについても学びます。10歳からは、妊娠に必要となる生殖器、妊娠、結婚、家族計画について学びます。
このカリキュラムの内容を聞くと、とても先進的で充実した性教育だと感じますが、それではなぜ児童婚やそれに付随する早期妊娠、早期出産、HIV感染などがいまだに問題となっているのでしょうか。
カリキュラムは充実していますが、実際は学校現場でその通りに導入されているかは不透明である、と小島さんが教えてくれました。ほとんどカリキュラムの内容に沿って行われていないのではないか、というのが懸念点だそう。
その要因として考えられるのが、まずは国語、算数、理科、社会などのアカデミックな科目が優先されているからだそう。実際にこちらはケニアの事例だそうですが、ウガンダも似たような状況である可能性が高いとのこと。
また、教師の力量不足も原因の1つ。カリキュラムは発表されているものの、教師が性教育を教えるスキルトレーニングに関しては政府からの方針が出ておらず、教師自体もどうやって性教育を進めていいのか手探りなのが分かります。
さらに、ウガンダはキリスト教を信仰する人がほとんどで、地方でもカトリック教会の権威が強いそう。そのような宗教リーダー達は、3歳からの性教育というのに抵抗感を持つことも多いようです。また、保護者の反対も根強くあるとのこと。
結局、実際に行われているのは禁欲を軸とした性教育になってしまうそう。婚前交渉はやめましょう、結婚したら貞淑を守りましょうといったような内容に偏ってしまっています。
女の子の体、心、そして権利を守るためにも大切と言える性教育ですが、実際はなかなかそこまで踏み込んだ教育がされていないのが現実。それによって、女の子の貧困、教育からの中退、児童婚や早期妊娠などの問題がまだ解決に至っていないと言えるのではないでしょうか。
上記のような性教育の内容を改善するためには、教師のスキルトレーニングをする、NGOが性教育のプログラムを作って授業をすることが大切。
そもそも、女の子たちが自分の体を守る権利について学べていない現状なので、性教育の中にどんな内容を含めるかによって、児童婚やHIVの問題も改善に繋がるかもしれません。
性教育という予防がうまくいっていないのが実態の中、まずは若くして妊娠して産まざるを得ない女の子たちへ対応が求められていると、小島さんは話します。
その1つが、中絶への理解と安全な中絶の普及だそう。ウガンダでは中絶は違法であり、レイプや母体が危険に晒されているという証明がないと中絶を選ぶことはできません。その結果、妊娠、出産時に亡くなってしまう女の子がいたり、心に傷を負ったり、体に障害が残ってしまう女の子もいます。
そこで必要になるのが、自分の体は自分で守るというライツの視点。
例えば、隣国のケニアでは薬局に経口中絶薬が置いてあり、中絶薬へのアクセシビリティがあるそう!日本にもないので、これは驚きの事実でした。ただし、アクセシビリティだけではなく適切な飲み方などの情報やフォローも提供していくことも必要とのこと。
国レベルでの法律でもあるので、中絶が権利であることに正面から対抗していくのは難しいかもしれません。ただ、性教育や女の子の権利という視点を通じて、社会に啓蒙していく必要はあるかもしれません。
また、予防の観点で考えると、早期妊娠、出産に至った女の子たちが復学できるような社会作りも大切とのこと。
貧困や児童婚を要因として在学中に出産した女の子は、その後学校には通えなくなってしまっているそう。男の子や先生にも正しい性教育が必要ですし、保護者に対しても女の子は不利な立場にいるとこ、自分の体や相手の体を大切にすることについて教育していく必要がありそうです。
一言で性教育とはいっても、予防だけではなく対応が必要なんですね。
小島さんによると、ウガンダの女の子たちのことを考えた時に、今後の課題となるのは「正しい情報を誰がどうやって伝えていくか」ということだそ。性教育の内容はもちろんですが、性の情報へのアクセスも課題になりそうです。
今、ウガンダでは携帯電話の普及率が80%ほどで、今後若い人たちがスマホを持つ時代の到来もそう遠くないと見込んでいるとのこと。そうなったときに、正しい性の情報へアクセスできるのか、迷った時に信頼できる大人に相談できるのか、という判断が課題となるとのことです。
そういう判断、情報提供などにおいて、小島さんが所属するエイズ孤児支援NGO・PLASも支援活動を続けていくそうです。
小島さんにお話を伺って、ウガンダでは貧困問題、望まない早期の結婚、早期の性交渉、妊娠、女の子の権利が守られていないという現実がまだまだ社会問題としてあることが分かりました。
そして、これらは女の子が教育を受けられずに教育から中退してしまうことに繋がり、社会の貧困の連鎖に繋がっているのではないかと感じました。
教育においても、予防も大切ですが、対応が大切ということがよく分かりました。誰もが望まない結婚、妊娠、出産をしないことがもちろん大切ですが、そうなった時にも学校に戻り、自分の人生を切り拓けるだけの教養を身につけていくことはとても大切ですよね。
HIVの感染によって命を落とすことのないようにするのはもちろん、女の子たちが適切な教育を受けて、大人になれる社会になることが望まれます。
小島さんたちのように直接の支援をするNGO団体だけではなく、私たちも遠いアフリカの出来事と思わずに、できる支援を考えていきたいと改めて思います。
元国際線客室乗務員。現在は、旅、美容、ライフスタイルを中心として執筆活動をしながら、モダンカリグラファーとしても活動中。子育てをしながら、「ママでも美しく楽しく」をモットーに、美ライフスタイルを追及中。
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