Miho Okawara Profile

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「自分の価値を高めることで、業界を変革する」セレブリティ・ネイルアーティスト・Miho Okawaraさん

#グッドバイブスウーマン #生き方にセンスがある

#グッドバイブスウーマンvol.9。今回ご登場いただくのは、レディ・ガガやビヨンセのネイルアートを担当する、Miho Okawaraさんです。Mihoさんの顧客の名前が錚々たるセレブリティというだけでなく、トップアーティストである彼女たちの多くは、ネイルもファッションと同じレベルで、作品や演出の一部として重要視していることでも有名です。

2024.08.13公開

東京でネイリストとしてキャリアをスタートした後、ロサンゼルスに拠点を移したころから、肩書きをネイルアーティストに変え、所属したサロンからの独立後と現在は、セレブリティ・ネイルアーティストとして活動しています。変わっていった肩書きに込められた、Mihoさんの決意と情熱について、聞きました。

@mionails
公式HP

顧客であるセレブたちが本当に求めているモノとは

―アメリカのロサンゼルスに拠点を置き始めたのはいつからですか。また現在の活動を教えてください。

Miho:2012年です。出身は愛知県なのですが、名古屋のビューティに特化した専門学校へ進学し、ヘアメイクやファッションなどもあったなか、自分に合っている気がしてネイルを専攻しました。卒業後に上京して、ネイルサロンに就職し、副店長やお店のPRを担当しました。そして、そのお店がアメリカに進出することになったんです。当時はアメリカに移住する予定どころか意思もなかったのですが、立ち上げメンバーのうちの1人に、「Mihoさんが絶対、適任です!」と指名されて“行く羽目”になりました。その人が、後の私の夫になるんですが。

―そうなのですね!

Miho:立ち上げメンバーたちが奮闘し、私も初の海外進出となる新規オープンをお手伝いするために、ロサンゼルスに引っ越ししました。試行錯誤しながら、開店準備をしているときに、いままでの“ジャパニーズ”ネイルサロンは裏通りにひっそりある感じで、正直、地味で目立たないところであることに気がつきました。お店は、富裕層もターゲットにしたい、と思っている。そうなのであれば、華やかでなく控えめな、これまでのジャパニーズ・ネイルサロンの印象や値段設定を変える必要がありました。従来のジャパニーズ・ネイルアートに、確かな技術があることは誰もが知っている。それらは担保したうえで足りないのは、よりストレートなアピールやセンスだと、チームと話し合って、(ファッショナブルなメインストリートとして知られる)メルローズに開店しました。目の前にマーク・ジェイコブスがある、あの通り沿いです。

―メルローズの中でも中心部ですね。

Miho:あの有名な交差点の角です。その後、セレブが見つけてくれて噂や評判が広まり、セレブたちが集まる大人気サロンになりました。それから、もうひとつ、大事なことに気がつきました。アメリカでは、ネイリストの地位がとても低いんです。正確には、ネイリストとも認識されておらず、ネイルサロンで働く人たちはマニキュリストと呼ばれていました。けれど、私たちは、マニュキリストでもネイリストでもなく、ネイルのアーティストだと。当時、ネイルアーティストという肩書きは、誰も使っていなくて、まったく浸透していなかったのですが、自分たちをそう呼ぶことに決め、自分たちの地位向上のために注力することを決めました。

―その後、独立されたわけですか。

Miho:立ち上げから一通りを経験することができましたし、お店も軌道に乗ってきたので、2年ぐらい働いたころ、自分の力がどれくらいあるのかを知りたくなって独立することにしました。ずっとネイルには携わっていたけれど、そのサロンのみで働いていましたし、自分の実力って本当はどれくらいあるのか、と。

―挑戦ですね。

Miho:私は日本人で、日本は豊かな国です。ありがたいことに日本に実家がありましたから、独立が失敗しても、いざとなったら帰る場所がある。だから、チェレンジしてみようと思いました。

―2年後ということは2014年に独立された。

Miho:自力のほかに、もうひとつ独立を決めた理由があります。富裕層やセレブのお客様たちに、日本の確かなネイルアートを届けるノウハウがありました。そして、ネイルアーティストの肩書きにふさわしい地位向上を目指せるところまできた。このときまだ、地位そのものは向上できていません。が、そこを目指せる位置までのぼってきたんです。そして、私の目指す場所は、もっと高いところにありました。ネイルアーティストとして活動し、認めて求めてもらうことが私のゴールではなく、その先に行きたかったんです。

サロンで出会ったお客様たちもセレブですが、トップ中のトップセレブというのは、ネイルサロンには来ません。私が目指したいレベルの、真のネイルアーティスト地位向上のためには、自分がそのレベルに到達する、つまりそのトップのセレブリティたちと仕事をすることだ、と思い至りました。彼らトップセレブたちはとても忙しく、サロンに行く時間がなくて、営業時間や店の予約スケジュールに合わせることができません。ですので、私が彼らのほうへ出向く出張スタイルのほうが合ったサービスを提供できると思いました。サロンに勤務していては、それはできませんから、独立することにしました。

―なるほど。

Miho:また、ネイルアーティストとしての成功というのは、お店の勤務だろうが撮影だろうが、予約や仕事で埋まっていることが通例でした。“売れっ子”になることが成功とされていたんです。けれど、私が目指すべきはそこなのかを自問し、トップセレブたちの生態を研究して分析することにしました。彼らは多忙で、時間の融通が利かないことも含めて、ワガママな生き物なんです。ですから、私は、そのワガママをすべて聞くことにしました。予約が取れない人気アーティストやこの業界でのこれまでの成功ではなく、私なりの成功を追求することにしたんです。

―すごい着眼点ですね。

Miho:独立後は、時間的なことを含め、あなたのワガママを聞くことができます、それが私のサービスです、というところを宣伝しました。それから、「Mihoならいつでもつかまって飛んできてくれる」、「彼女ならなんでも聞いてくれる」ということが、現在の活動につながっていったという感じです。また、提供サービスの値段を高く設定しましたので、顧客数や勤務時間が前より少なくても、月の売り上げを立てていくことができました。そして、早い段階から、このやり方が成功するという確信がありました。その確信のとおり、私のしたい方法や方向で実現し、道が広がって信頼してもらえるようになっていきました。

―ハウスコール(出張)スタイルにしてからの顧客にはどのような方がいますか。

Miho:ビヨンセやレディ・ガガです。今でもお仕事していますので、彼女たちとの付き合いはもう10年以上になります。

―Mihoさんなりの成功を追求するとは、具体的にどのようにしていったのですか。

Miho:ネイルアーティストとしてはこれが成功!という定義にこだわらず、固定観念を壊す、逆の発想を採用しました。私のターゲット顧客であるセレブたちが、本当に何を欲して、何を必要としているか熟考しました。そのうえでのサービスを提供し続けようとするのですが、自分や世間のこれまでの常識を覆しているので、予約がおもったように入らないときは不安にもなりましたし、値段の高さ含めやり方を理解されず、批判されたこともありました。

―その後は、どのように打破または変わっていったのですか。

Miho:安易な道を選ばないようにしました。値段を下げる、方針を変えるなどすれば、その不安を解消できる。不安になるたび、何度も、何度も考えちゃいました。正しい解決にみえるけれど、違うんです。そのほうが、安易でラクなのです。私は何者になりたいんですか、と自分に問いかけました。ネイルアーティストの地位を上げることを目指しているんでしょう? かっこよくて唯一無二のネイルアーティストになり、私がいきたいのは第一線でしょう?と。歯を食いしばって妥協しないように耐えました。予約が入らない空いた時間を不安に費やすのではなく、センスを磨きに美術館へ行くなど、とにかく自分の価値をあげるものに時間を割くようにしましたね。

Miho Okawara 1
私ならではのサービスに徹底的にこだわる

ネイル業界の常識を打ち破り、私が追求すべきコト

―センスを磨くとおっしゃっていましたが、どのように? またはクリエイティビティやアイデアの源はどこにありますか。

Miho: 何にでも興味をもつことは、とても大切だと思います。源と聞かれると難しいですが、サロンで働いているときは、自分の時間と呼べるものがほとんどなかったんです。みたり、いったりができていなかった。いまの流行を知ることや、アートをみることは大切です。なにより大事なのは、自分は何を好きなのか、何に好きと感じるのかを知ることです。知るためには、“外に出る”ことではないでしょうか。ネイルのデザインなども、スマートフォンやネット上で知ろうとするのではなくて、生ものを体験する。また、ネイルアートというジャンルに限定せず、芸術全般に触れるようにしています。

―特にトップセレブが顧客であれば、なおさらですね。

Miho:自分が身に着けるものにも、とても注意をはらうようになりましたね。ロサンゼルスに来たころの私はただのギャルで、それではダメだと強く思いました。“よい”服を着るように気をつけています。

―高級な“よい”服ですね。

Miho:高級にはどちらの意味もあります。TPOに合わせ、例えばレッドカーペットでのお仕事であれば、キレイなスーツを用意しますし、プレミアのパーティでは参加するにふさわしい装いをします。たんに値段が高いやハイブランドという意味での高級というだけでなく、自分らしさのある“よさ”を大事にしています。私は日本人ですので、Made In Japanも意識しますね。


また、顧客が私を呼ぶ理由にも関係していると考えています。もちろん、一番はネイルに関する技術でしょう。特に私が自負しているのは、速さです。ただ、サービスのスピードや結果もさることながら、プラスアルファの価値提供、つまり“Mihoでなければならない”を常に考慮しています。日本のブランドや製品、日本人のデザインなどを学んで、積極的に取り入れています。世界で活躍しているセレブの感性はすでに高く、彼女たちはグローバルな流行やさまざまなことを知っています。が、私からは、あまり知られていないリアルな日本やアジアの情報を聞くことができる。“Mihoに聞くと面白い!”と思ってもらえるような感性づくりを含め、身に着けるものに気をかけています。

―視野を広げた。

Miho:経済や貨幣のことだけでなく、日本に来るのがクール!となっていますよね。日本をお忍びで訪れるときには、Mihoに聞こう!と、そういうところでも頼ってもらえたり、関係性が広がったりするのは、ネイルアーティストの仕事の範疇にこだわっていたらできていなかったかもしれないです。

―ネイルアーティストという肩書きを超えたサービスなどの広い展望をお持ちだと思うのですが、目標や夢などはありますか。そもそも夢とは何でしょうか。

Miho:夢、あります! めちゃめちゃ、あります! 2012年ぐらいの、私が注力したころから、ネイルアーティストの地位は確実に上がったという自負があるんですね。また、偉そうなことをいうと、その向上の一端を担ったという自信もあります。独立後の私のやり方は多くの批判もありましたけれど、金額を上げたこと含め、それは業界のためになるという信念がありました。私の値段設定は、ほかのネイリストさん含め、ネイルアーティストたちの助けになったと思います。そのジャンルやポジションそのものの価値が高まれば、自然と値段や価値も上がっていくからです。また、彼女たちトップセレブたちの大事な作品やクリエイティブの一部とみなされれば、これまでの撮影での(スタッフ)クレジットでは忘れられていたか、ずっと後ろだった私の名前が、そのセレブとへアメイクなどに続いてトップ4として表記されていると、この職業や私自身が認められたと感じて、とてもうれしく思います。

ただ、私だから上に上がれた、上げることができたのだ!というよりは、私は日本人で、日本だからということで受けられる尊敬や信頼があることは、とても感じています。コロナ禍が起き、アメリカがベースだったときにはまったく気づくことのなかった現状に、ある日直面したんです。それは、日本のネイル業界と接する機会があったのですが、私が専門学校を卒業したときと、まるで変わっていなかったことです。むしろ、ネイルサロンはいっぱいあって価格破壊が起きていて、ネイルアーティストの地位など向上どころか、認識もされていない。「こりゃあ、大変だ!」と思いました。グローバルで活躍するセレブたちから、ジャパンやジャパニーズ・ネイルアートは評価されているのに、日本や日本にいる日本人がそれに気がついていない。いくら海外に出る人がいようと、そもそもそれを生み出している日本、日本人、日本の業界が全然豊かではない。潤っていない。ということで、この先、そうですね、今後10年以内の私の目標、そして夢は、「日本のネイリストとネイルアーティストたちの地位を上げる」となりました。

―聞いていて、ワクワクします。

Miho:まだ、あります。ネイルの施術ってどうしても、オフするときにダストが出たり、アセトンをはじめケミカルを使ったりします。危険な面も持ち合わせていますよね。ヘアやメイク、コスメ界ではどんどん開発が進んでいます。ヘアカラーも、髪が痛むのは当然だった。ファンデーションを塗りこめば、肌は荒れると知っていた。美は痛みや犠牲の先に手に入れると思われている節がありました。そんな昔と比べて、いまはトリートメントしながらヘアカラーできます。美容液の効果も入ったファンデーションも市場に出ています。進化しているんです。残念ながら、ネイル界はまったく進化できていない。ネイリストたちは、いまだ体に悪いダストを毎日吸いながら、仕事している。体によくない、合わないケミカルでアレルギーを発症して、辞めていくネイリストも少なくないんです。悪いとはわかっていても、やめることができていない。何とか環境を変えようと、業界はケミカルについて勉強し、ダストを吸わないで済むサロン用の吸引機を開発しました。でも、それでは根本の解決にはなっておらず、本来の問題から目を背け、なんとか日々を凌いでいるという印象を、私は受けました。だから、私はその問題に立ち向かうことにしました。

ダストが出ない。アセトンなど有害なケミカルを使用しない。お客さんの爪も削らない、爪の表面を傷つける必要がない。そんな画期的な商品の開発がやっと実現しました。発売は、今年11月を予定しています。

―それは、おめでとうございます!

Miho:ありがとうございます。私は日本人だし、新しい夢のために、Made In Japanにこだわって日本からローンチします。ネイル業界にもっともっと明るい未来をもたらすために、この商品を機に日本から発信して世界を変える礎を築けたら、と思っています。


登壇やアカデミーの情報はMihonails_JPから発信

そのヒトの価値を知る。自分のために、身近な人のために

―まずはどのように変えていくのですか。

Miho:もっとネイルをやる人が増えたらいいな。ネイリストになりたい!と思う人が減っているんですよ。爪を削りたくない。薄くなってしまうんでしょう?と。実際に、爪に影響を及ぼします。いくら昔より痛まなくなってきているよ、と言っても、せいぜい痛み“にくい”程度です。痛むことには痛みます。根本にアプローチ、つまりほぼ無害というところまで追求することで、分母を増やすことはできるのではないでしょうか。そこまでして初めて、ネイルやりたい!と言える子たちが増えるのではないでしょうか。そういう人たちが増えない限り、ネイル界の未来は明るくなりえません。未来のネイリストたちがこの業界を支えるわけですから。なのに、お客さんの取り合いをして、価格破壊を起こしているものだから、日本のネイル界は衰退していくのです。

―そのために必要なことは何でしょうか。

Miho:ネイリストを筆頭に業界を豊かにしていくためには、ネイリストたちのマインドも変えていく必要があると思います。そのために、ネイルのアカデミーを開校しました。健康被害のない商品や施術の技術も開発していくと同時に、取り合いによる価格破壊をこれ以上起こさないように教育していくことで、ネイリストがハッピーになって、お客さんもハッピーにできるのだと思っています。

―従業員にとっても、お客さんにとってもヘルシーですね。

Miho:夢と目標の話に戻りますが、日本でネイルサロンを立ち上げ、そこで働くのは豊かなネイリストたちのみ。私の目指すことを、そのサロンで実証できたら、と考えています。

―アカデミーのことを教えてください。

Miho:オンラインで実施し、私自身が教鞭をとっています。ネイルに関するテクニックはもちろんですが、マインドについても伝えます。

―そんなネイルスクールはこれまでにないですね。

Miho:特にネイル業界で、精神性や心持ちについて教えてくれるところはこれまでなかったと思います。

―そのような伝えるべきマインドを教えるうえでのキーワードはありますか。あるいはご自身が大切にしていることはありますか。

Miho:いろいろありますが、たとえば、「お客様は神様」でしょうか。昔から言われていることですし、実際にそうでしょう。お客様のことを第一に考える、という意味においては。けれど、まず自分がハッピーでなければ、お客さんをハッピーにはできない。自分の何かを犠牲にしながら、お客様を祀り上げるような風潮には疑問を感じますね。ネイルは自分のやりたいことで、神様だからしょうがない、というような。いやいや、そうではなくて、自分の好きなこと、やりたいことを追求しているのだからこそ、その情熱や覚悟が評価されるべきです。また、技術者って、上手くなれば成功、またはトップになれると思っている。それに加え、同じことをやり続ければ、いつか誰かが見つけてくれると思っている。それって自慰行為と変わらないですよ。気持ちがいいのは自分だけで満足するのではなく、人にきちんと、自分のことを評価してもらうために伝えなくてはならない。

―修行や苦労していることで、それに甘んじてしまう。

Miho:そうです、お客様は一往にして神様かもしれないけれど、そのお客様のニーズを本当に理解しているのか。そこを理解せずに、実は自分のエゴだったりしていないか。ネイルのサービスでいうと、わかりやすい例が施術時間です。時間がかかればかかるほど、“丁寧なサービス”とみなされ、そちらのほうがよい“はず”という誤解がある。日本だと、“クイックコース”は安い値段になるんです。私が壊した固定観念のひとつですが、超多忙で時間のないセレブにとって、施術時間がかからないのはメリットでしかない。速いのは、スキルであり、評価対象なんです。エステではきっと違うでしょう。ゆっくり過ごせて、リラックスできることはお客様たちが求めていることかもしれない。けれど、一体誰が、ネイルサロンのイスに2時間も3時間も座っていたいですか。30分で終わったほうがいいに決まっています。

―同じクオリティなのであれば。

Miho:そのとおりです。同じ内容を短い時間で提供できるのであれば、むしろそれは値下げではなく、評価されるべき対象なんです。同じサービスを早く提供できるのであれば、あなたはそれをちゃんと付加価値として、請求しなければならない。業界の常識や自分の固定観念ではなく、どこにニーズや価値が存在するのかを見極めるマインドが大事なんです。また、そういった“マインド”や“教え”を鵜呑みにして、じゃあ“早いから高いです“というのも違う。高い分、提供する品質は、それに見合ったものでなければならないです。地方で時間に余裕のある方には、そんなに時間の短縮は問題でないかもしれない。ただ、都市部の「時は金なり」なバリキャリ女子には、それはニーズにおける大きな要素です。そういったことが、私が教えるマインドですね。技術においても、コンテストに出る作品づくりと、お客様のことを思ったものは違う。この一瞬に、爪はキレイに見えても、そんな施術では、お客様の手は乾燥してカラカラになってしまうのでは?と。そこが技術だけを教えるのではなく、「お客様は神様」というキーワードの下に、伝えるところですね。

―大事なポイントですね。

Miho:技術を向上!といいますが、それは当たり前です。お客様やニーズから、真に何を求められているのか、ちゃんと理解して、ちゃんと提供する。それも当たり前のことですが、意外にできていない。お客様のためと口で言うばかりではなく、ちゃんと挑戦しませんか、と。大きな目標を掲げて、ちゃんと夢を追い続けてみませんか、と。失敗したっていいのですから。

―仕事、働くことの定義とは何でしょうか。

Miho:以前は、“あまり仕事をしたくないな”と思っていたんですよ。サロンで、毎日忙しく働いていると、めっちゃ仕事してる!となりますよね。独立しても、夢や情熱だけではない業務も出てきます。ただ、いまは、“やりたいことだけをしたい”と思っています。もちろん、仕事をしていると、やりたくないこともあるだろうけれど、それはストップしても夢や目標のための困難や挑戦には立ち向かう。それはやりたくないことではなくなるからです。自分に苦手なことも起きますが、それは人に任せる。好きなことだけで稼ぐ、好きな人たちと好きなことだけをやっているいまは、“仕事している”とあまり感じないですね。

―自分の好きやマインドの状態を大事にされていると思いますが、ご自分をよい状態に保つために、気をつけていることはありますか。

Miho:身近な人に思いやりをもつことです。尊重することですね。たとえ、自分に嫌なことが起きても、それは私の大切な身近な人には関係ない。また、その嫌なことを言ったり、したりした人にも、人生がある。その人にはその人の人生があることを尊重できると、嫌なことに逐一イライラしないで済みます。あまりに肌の合わない人であれば、その人の人生から離れたらいい。自分がポジティブな状態を保っていれば、同じような人たちが集まってくると思っているので、もしも嫌だな、と思う人が集まってきているときは、自分のモチベーションやオーラがそうなのかもしれないな、と思うようにしています。その嫌な人を否定して、責めるよりは、自分を省みるんです。相手のせいにしないように心がけますが、私も人間だから、しちゃうときもある。けれど、落ち着いたときに、自分を見直すようにしていると、前向きにいろいろなことが進んでいくんです。前向きであれば、ハッピーだし、まわりもハッピー。つまり、循環ですよね。私の人生に、身近でかかわってくれる人、たとえば夫をいちばん尊敬していますし、感謝しています。尊重というか、身近な人にこそずっと感謝を持ち続けて、それを表現していくことって、大切だと思うんです。特に、評価されていくと、おだてられたりして、調子にものってしまう。そうならないように、私らしいまま、自分らしく生きていきたい、と思っているんです。そのようなことが、仕事から家庭にかえってきて身近な人たちにできること、いまの私がしなければならないことだと感じています。調子にのるってダサいですもん!

―どのようなときに幸せと感じますか。

Miho:ありがたいことに、かわいい娘たちや家族がいて、やりたいことだけをして、とても充実してすべてが満たされているので、ここからの私ができるのは、ひとりでもいいから誰かの助けになれたら、と思っています。誰かの背中を押すことのできる人間でいたいですし、私に出会えて本当によかったです、と言われることに幸せを感じているので、そう言ってくれる人をひとりでも増やせるようにしたい。まずは、身近な人の、そういう存在になりたいと思いますね。

―では、生きる喜びを感じる、豊かだな、と思うときはどのようなときですか。

Miho:私に興味をもってくれる、生徒さんや商談相手と、“え、その未来、やばくない?”とワクワクするプロジェクトについて話しているときです。その生徒さんの人生が変わりそうだったり、変わっていく様子をみたりしていると、すごく楽しい! そうやって、すごく忙しくしていても、“ママは私たちをかまってくれない”ではなくて、“ママの働く姿、かっこいい!”と思ってもらえるように、身近な人を思いやること。また、そうやって子どもたちにみせていことで、娘たちがキラキラしながら成長していくさまをみることができるのも、大きな喜びであり、生きがいですね。

―ワクワクやキラキラの循環は、媒体のテーマでもあります。Mihoさんの思う美の基準とは何でしょうか。特に、トップセレブと会っていらっしゃるので、外見の美しい人はいっぱいいます。

Miho:心がキレイ、というか、自分の生き方に強く太い芯がある人は、肌もキレイだし、姿勢もキレイだし、キレイですよ。アーティストの中には、オフの期間にルーズな生活をする人もいますが、それがまったく醜いものではない。私の顧客たちは、世界の第一線で活躍し、世の中を変えている人たちだから、ものすごい数の人たちを幸せにしているんです。だから、芯があるし、とんでもない責任を背負って、家族や世界のために人生を生きているんですよね。そういう人たちは、美しいし、カッコイイです。

―Mihoさんにとってのミューズはいますか。憧れの人など。

Miho:そういう意味では、その都度出会う人みんな、憧れの人ばっかりかもしれないです。 たとえばビヨンセは、あんなにも世界中から期待されているプレッシャーのなか、それでも期待以上の作品を世に送り続けている。とんでもない責任のうえに、子どもを育てていて、どの角度からでも尊敬しかない。そんな大尊敬する相手から、「ネイルはMiho以外に任せたくない」と言ってもらえて、信頼してもらえる。それは幸せだから、そういうところに自分の身を置き続けることで自分を高めていきたい。東京にいる、とても美人な女性は、すごく旦那さんを大切にしていて、そういうところに憧れる。いま、美しい人たちに囲まれていて、出会うのはステキな、尊敬してやまない憧れの人たちばかりですね。

「ブレない芯があるかないかが、超一流セレブとワガママセレブの違い」と教えてくれたMihoさんの目は、キラキラしながらもシャープなものでした。世界中の人が知っているようなセレブリティと出会い一緒に働くMihoさんにも、彼女たちが抱える責任とその幸福が伝わっているのでしょう。Mihoさんに、そういうワクワクする人生を進む覚悟があることは明らかだからです。

Miho/セレブリティ・ネイルアーティスト
Miho Okawara Profile
■ミホ
愛知県出身。2012年に、アメリカ・ロサンゼルスに移住。ネイルサロンのインターナショナル第1号店のジェネラル・マネージャーとして立ち上げに従事。2014年、独立。レディ・ガガのドン ペリニオンキャンペーンやビヨンセのルネッサンスワールドツワーなどのプロジェクトを担当するなど、トップセレブリティたちとワールドワイドに活躍中。


取材・文/八木橋恵

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