Wellness
現代の深刻なフードロスとは。問題や取り組みを知って、今日から踏み出せる第1歩を。
今、世界ではフードロスの問題が深刻化しています。フードロスがどんな影響を与えているのか、どんな問題が起こっているのか。この記事では、フードロスの実態について解説しています。日本や世界の取り組みや、家庭で出来る対策もまとめていますよ。
2020.12.09公開
フードロスとは、まだ食べられるのにもかかわらず、廃棄されてしまう食品のことを指します。例えば賞味期限が切れたために捨てられてしまう食材や、弁当などで残してしまったおかずなど。食べられる状態なのに捨てられてしまう食べ物が、フードロスなのです。
日本でのフードロス量は、年間612万トンほど。これを国民1人あたりとして考えると、毎日お茶碗一杯分の食品が廃棄されていることになります。また、フードロスを含めた食品廃棄量は、年間2550万トンにも上るとのデータも。非常に「もったいない」ことが起こっているのです。
フードロスは、世界で起こっている「食の不均等」に影響していると言われています。「食の不均等」とは、先進国では大量のフードロスが出ているにもかかわらず、後進国では食料が不足している状態のこと。世界規模で見ると一人分の食料は足りているのに、実際には満足に食事ができない人がいる。これが食の不均等です。
世界では、約40億トンもの食料が生産されています。しかしこの食料のほとんどは、収入が多く流通経路が整備されている先進国に集中。全ての食料を消費できない先進国は、余った食料を廃棄するのです。食の不均等は、フードロスが影響する大きな問題の一つだと言えるでしょう。
フードロスの問題は、主にヨーロッパや北アメリカなどの地域で発生していると言われています。一人当たりの発生量で換算すると、どちらの地域も年間250から300キログラムのフードロスが生まれているとのこと。生産から小売、そして各家庭の消費段階でも、かなりの量のロスが出ているのが現状です。
東南アジアやアフリカなどの後進国では、一人当たりのフードロス量は年間120〜170キログラムほどです。北アメリカやヨーロッパと比較すると、その差は2倍以上。また後進国でのフードロスは、生産から小売段階がほとんど。個人が消費する段階での廃棄量は、なんと1割以下となっています。
フードロスが生まれる原因として考えられるのが、「外観品質基準」。先進国では安全な食品を提供するため、生鮮食品に対して高い基準が設けられています。この基準をクリアしていないものは、それだけで廃棄。本来食べられるはずの食品が、こうして捨てられています。
基準を満たさない食材は、本当ならば加工をしてリユースしたりするべきです。しかし、このような加工には手間もコストもかかってしまう。それならば廃棄した方が安く済む…と考える生産者が多いのも、フードロス発生の原因の一つとされています。
消費者が無計画に食材を購入することも、フードロスに影響していると言われています。先進国では、様々な食材が豊富に販売されていますよね。量が多い方が少し割安に設定されている、ということも多いです。
そのため無計画に大量の食材を購入してしまい、結果として食品を余らせてしまう消費者がたくさんいる。せっかく購入されたのに、使われないまま捨てられる食材が多い。これも先進国で起こるフードロスの原因なのです。
スーパーやコンビニなどで当たり前のように目にする、食品の大量陳列。これもフードロスの原因です。小売りの段階では、売り切れ商品を出すのはNGだとされており、余剰に食品を並べるのが当たり前になってしまっています。
同じ商品が大量に並べられている上に、品数も非常に多い。どうしても消費者に購入してもらえない食品が出てくるのは当然で、その結果、残ったものが廃棄されてしまう…。今の社会を作っている「当たり前」が、フードロスの大きな原因なのです。
日本で行われている対策として有名なのが、30・10運動。これは、飲食店での食品廃棄量を削減するための運動です。飲食店で出るフードロスの半分以上は、食べ残しから生まれるもの。この事実に基づき、食べ残しを削減してフードロス対策をしようということから始まりました。
乾杯後の30分間、そして飲食が終わる10分前は、自分の席でしっかりと料理を楽しむ。また、注文では食べられるだけの量を注文する。これが30・10運動の詳細です。誰でも簡単に取り組める対策ですので、是非意識していきたいことですね。
日本で行われているフードロス対策として、販売期限の延長が挙げられます。これは京都市で行われている取り組みの一つで、加工食品を販売できる期間を、賞味期限・消費期限の日まで延ばすというもの。検証も兼ねた取り組みとして行われた対策で、約10パーセントのフードロス削減を達成しています。
ただ販売期限を延ばすだけでだけでなく、期限が迫った商品を値引きすることで、より廃棄量が減ったとか。京都市で実験的に行われた取り組みですが、日本各地で行うべき対策だと言えるでしょう。
フードロスを減らすために、「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議」という団体が発足しています。「食品を適量だけ、残さず食べきる」をスローガンにしており、日本全国で合計408もの自治体が参加。現在、食べきり運動の普及や、フードロスが与える影響を広めるなどの取り組みを行なっています。
またフードロスのための施策を共有したり、食材を使い切るためのレシピを公開したりという活動も。環境省や農林水産省も推奨している、効果的な対策だと言われています。
てまえどりは、神戸市で行われているフードロス対策の一つ。販売期限が近くなっている値引き商品を手前の方に置き、廃棄されてしまいそうな食材から購入してもらおう、という取り組みです。
また「てまえどり」の対象となる商品には、「なくそう食品ロス!すぐに食べるなら是非!」という文言の書かれたラベルを貼付。文字で購入を促し、フードロスを減らそうと試みています。
食品廃棄の禁止は、フランスで実際に行われている取り組みの一つです。大型スーパーマーケットに対し、賞味期限の切れた食品や売れ残った食材を廃棄することを禁止する、という内容。2016年の2月に開始されてから、食品ロス削減に大きく貢献したと言われています。
売れ残った食材は国内の貧困層に届くよう、ボランティア団体への寄付が義務付けられています。もし食品を廃棄した場合は、量に合わせて罰金を徴収。まず国内での食の不均等をなくそう、という対策ですね。
スペインでは、過剰に余った食品のシェアが行われています。まず地域ごとに、「連帯冷蔵庫」というものを設置。飲食店や一般家庭で出た過剰食材は、この冷蔵庫の中に入れます。
貧困者は冷蔵庫の中に入った食料を受け取り、その食料を食べるという仕組み。こちらも、国内の食の不均等の是正を目的とした取り組みですね。
デンマークでは、フードロス削減のために、期限が切れた食品を取り扱うスーパーがオープンしました。このスーパーでは、賞味期限が切れていたり、包装に汚れがあったりするような、普通のスーパーでは販売できない食品が取り扱われています。
通常のスーパーと比較すると、商品は最大半額の値段で販売されているのが特徴。またこのスーパーは、ボランティア団体が運営しています。国を挙げて行われている、革新的なアイデアですね。
各家庭でフードロスを削減するためには、必要な分だけ購入することが大切。安いから、きっと使うからと、大量の食料を一気に買うのはNGです。一回の料理で使う分だけを買うようにすれば、自ずと家庭での食品ロスは減っていくでしょう。
また買い物に出かける前は、必ず家庭の冷蔵庫をチェックして。スマホで写真を撮影したり、メモに残したりすると効果的です。うっかり買いすぎて腐らせてしまった…という食品を減らすようにしましょう。
期限が近い食材から調理するのも、フードロス削減の基本。「いつか食べるから」と残した食材は、フードロス予備軍となってしまいます。
期限が近い食材を調べ、その食材を使った献立を考えてみて。また冷蔵庫を整理する日を決めれば、食材が残らず綺麗に食べ切ることができますよ。
フードロスは世界に様々な影響を与えている問題。そして、一人ひとりが意識することで、解決に近づくことができるものでもあります。日本や世界で一体どんな取り組みが行われているのか、家庭でどんなフードロス対策をすれば良いのか。今回紹介した項目から、問題解決のヒントを得てください。
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