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途上国のジェンダー平等のためにできること。女性支援団体やサービスをご紹介
発展途上国のジェンダー平等に関する問題って何?私達にできることは?そんな疑問を抱えている方のために、途上国のジェンダー問題や、支援のための取り組みをまとめました。支援団体やサービスを通して、個人でもできることをチェックしてみましょう。
2021.02.02公開
途上国におけるジェンダーの問題では、真っ先に女性の教育環境が乏しいことが挙げられます。ジェンダー問題における「ジェンダー(gender)」とは、単なる男女の性区別のことではありません。社会的・文化的に規定された男女の概念のことを指します。
ジェンダーを起因とする格差は、先進国においても見られる問題。しかし、途上国においてはより深刻だと言われています。女性の立場が弱く、義務教育すら満足に受けられない現実があります。
女性が教育が受けられない理由
途上国では、性に関する被害も顕著。性暴力にさらされたり、望まぬ妊娠をしたりしてしまう10代の女性は少なくありません。地域によっては児童婚の風習が残っている場所も。女性売買において性的に搾取されるケースも目立ちます。
また、立場が弱い女性は、家庭においても社会的にも暴力にさらされる機会が多くあります。性器切除のように、女性の健康を害する慣習が残る地域も。
途上国の女性は、労働における負担も大きいとされています。家事や育児は女性が行うものという性的役割分担が顕著です。男の子が教育面で優遇され、家事を免除されるケースが多い反面、女の子に負担が集中することは珍しくありません。女性の無償労働時間は、男性の10倍以上だとされています。
労働市場においても、雇用の機会に格差が目立ちます。女性の多くは、露天商や家政婦といった賃金が低い仕事に従事。報酬をもらっても、男性よりも少ない賃金に抑えられることがよくあります。
途上国の場合、国民に対する支援が十分に行き届かない問題が見られます。国民が直面する問題に対応するための部局が存在しなかったり、専門家が不足していたりすることも。
例えば、災害時における支援不足は、ジェンダー問題とも無関係ではありません。統計的に見ても、男性よりも女性のほうが犠牲になりやすいという結果が。
途上国のジェンダー問題で、まず課題として立ちふさがるのが教育。日本では当たり前の義務教育も、地域によっては受けられないことがあります。
実際に、途上国では非識字者の60%が女性というデータも存在。女性の学びを重要視しない文化的側面や、教育環境の不備などが原因で、読み書きができないケースが見られます。
途上国では、男性よりも女性の方が権利を侵害されやすい現実が。例えば、出産できるようになると結婚させられる児童婚や、暴力などの被害が挙げられます。
毎年60~80万人が被害者となる人身売買においても、女性や女児の割合が多くを占めていると言われています。人権を侵されることのない世界を目指すのは、大切なことです。
貧困も、ジェンダー平等のためにクリアしなければならない課題の一つ。女性の平均所得が男性よりも低いことは世界共通の課題ですが、途上国ではより顕著だと言われています。
世界の貧困層を見てみても、1日1.25ドルで暮らすうちの70%は女性。労働に見合う正当な賃金を受けられないケースや、無報酬での労働なども目立ちます。
女性が担う出産も、クリアすべき課題に加えられます。世界では、妊娠・出産における合併症が原因で1日800人の女性が死亡しています。そして、そのうちの99%が途上国の女性です。
原因は、栄養不足や医療ケアの不足など様々。出産を控えた女性に対する、配慮が不足していることも影響していると言われています。
途上国では、病気の感染率においても格差が見られます。とくに、女性のHIV・エイズに関する問題は深刻。知識の不足や、性交渉の決定権を持たないことなどが影響して、感染リスクが高まっていると言われています。
また、貧困からワクチン接種の機会が持てないことや、栄養不足に陥りやすいことも病気の原因の一つに。男性のほうが優遇されやすい環境も影響して、女性が病気にかかりやすい現状があります。
災害時には女性のほうが犠牲になりやすいという、統計データがあります。1991年のバングラデシュ洪水被害では、女性の犠牲者が男性の5倍以上の数に。原因は、男性よりも力が劣ることや栄養不足による体力の低下などが挙げられます。救助が遅れれば遅れるほど、死亡リスクも高くなることに。
また、被災後の生活も、女性にとって厳しい環境になることが。周囲のストレスが大きくなったり、治安が低下したりすると、二次被害のリスクが生じます。
ジェンダー格差は、世界規模で取り組むべき問題。国連サミットで採択されたSDGsの達成目標の一つとしても数えられています。SDGsにおける17の目標うち5番目に「ジェンダー平等の実現」が掲げられ、問題の撤廃に向けて活動しています。様々な課題から、先進国よりも達成が難しいとされる途上国での男女平等を目指すために、私達に出来ることはどのようなことなのでしょうか。
ジェンダー平等に関して個人でできることを探しているのなら、まずは理解を深めることから始めましょう。ジェンダー平等に対する理解は、世界的に見ても浸透しきっているとは言えません。日本でもSDGsに関する小・中学生への教育は始まったばかり。理解者が増えれば、支援団体が行う取り組みもよりスムーズに受け入れられるようになるでしょう。
個人単位で理解を深め、周囲に伝えていくこと。今はSNSも非常に発達し個人の意見や団体の活動をシェアしやすい世の中になっています。まずは身近な方からでも良いので、実態を知っていただく1歩を踏み出すことは、ジェンダー平等のための支援に繋がるはずです。
ジェンダー平等の支援団体に寄付することも、個人でできる立派な取り組み。たとえ100円単位のお金でも、活動資金となって大きな意味を持つことになります。
女性が被っている問題に対して寄付を行える団体は様々あります。是非この機会に調べていただき、サポートしたいと思える団体やプログラムへの寄付を考えてみませんか。
支援団体が取り組むプロジェクトなどで、ボランティア活動をするのも、個人でできることの一つ。活動資金だけではなく、マンパワーを必要とする場所はたくさんあります。
より積極的な取り組みを希望する人は、海外ボランティアとして参加する方法も。専門知識や技術を必要とするケースが多いですが、途上国の現場で、ジェンダー平等に向けての直接支援が可能になります。
支援団体の職員として働くことも、個人でできることの一つ。長期的に、SDGsにおけるジェンダー平等に取り組みたいと考える方におすすめです。
途上国の女性にとって必要なことは何?ジェンダー平等を実現するにはどうしたらいいの?社会や文化、宗教的な背景によって、求められることは様々。現場に沿ったジェンダー平等への道が模索できます。
「UNWOMEN」とは、国連女性機関のこと。国連加盟国がジェンダー平等を達成するために、国際基準を策定するための支援を行っています。
当然、日本事務所もあります。政府や市民とともに、世界中の女性が支援を受けるための、プログラムやサービスの企画立案をするという役割も。男女ともにジェンダー平等を目指すHeForShe運動で有名ですね。
「独立行政法人国際協力機構(JICA)」は、途上国への国際協力を行う日本のODA機関。途上国が抱える課題の解決に取り組んでいます。
もちろん、SDGsに基づいたジェンダー平等に関する取り組みも無関係ではありません。現場で活躍する海外ボランティアの募集も行っているので、気になる方はチェックしてみましょう。
「ジョイセフ(JOICFP)」は、日本発の国際協力NGOとなります。活動の主な目的は、女性の命と健康を守ること。SDGsの目標も意識しながら、アジアやアフリカで、様々な支援プロジェクトを実施しています。
女性への支援や活動のための寄付も受け付けているので、個人でも気軽に協力できますよ。国内でできるボランティアの募集も行っています。
「プラン・インターナショナル(PLAN INTERNATIONAL)」は、イギリス人によって立ち上げられた国際NGO団体の一つ。子供の権利が守られるよう、1937年から活動を続けています。
現在は、女児や女性への支援にも力を入れている団体。世界の70カ国以上で取り組みを行っていることから、寄付を通して様々な地域の子供たちを応援することができます。
「ワールド・ビジョン(World Vision)」は、1950年から活動を続けているアメリカ発の国際NGO団体。チャイルドスポンサーシップという取り組みを通して、途上国の子供たちの支援を行っています。
チャイルドスポンサーシップは、子供たちが健やかに成長できるよう、必要な環境を整えることが目的。女児が教育を受ける機会も増やしています。個人でも気軽に参加できる取り組みなので、支援を始めてみるのも良いでしょう。
途上国では、日本とは事情が異なるジェンダー問題があります。SDGsでは、2030年までのジェンダー平等を達成しようと期限を設けていますが、まだまだ道の途中。できることから始めて、いつの日か、真の平等と言える世界を皆で実現したいですね。
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