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美しい海にだけ与えられる称号、ブルーフラッグとは?その意味と日本での活動を解説
皆さんは、「ブルーフラッグ」という言葉を聞いたことがありますか?美しい海を守るために制定された、プロジェクトの一種です。今回は、ブルーフラッグの意味について詳しくご紹介します。認証基準や、日本の取得ビーチなどもまとめていますよ。
2021.03.16公開
ブルーフラッグとは、ビーチやマリーナにおける国際環境認証を意味します。国際世界観光機関や国連環境計画などと連携し、世界中で推進されているのが特徴。現在、世界の45カ国・4559箇所のビーチで取得されています。
ブルーフラッグを取得するには、厳しい基準をクリアしなくてはいけません。環境教育や水質、安全なサービスなど、33つの規定を満たす必要があります。非常に厳しい審査が課されるため、なかなか取得できないのも特徴です。
ブルーフラッグを取得することで、SDGsという国際目標が達成できるのも魅力の一つです。SDGsとは、持続可能な世界を実現するために国連が定めた、世界共通の目標のこと。
ブルーフラッグ認証を目指す過程では、ビーチ周辺の関係者が協力する必要があります。ここからブルーフラッグの取得は、環境的側面や経済的側面を両立させた発展に繋がる、と言われているのです。ビーチの環境を守るだけでなく、日本や世界の未来に貢献しているんですね。
ブルーフラッグは、1985年にフランスで生まれたとされています。フランスの海岸沿いにある自治体が、浴場の水質改善と下水処理に取り組んだ結果、ブルーフラッグ認証が設立されました。
その後の1987年、ヨーロッパ議会にブルーフラッグのコンセプトが提示されたことをキッカケに、プログラムが開始されました。世界各国のビーチに対応できるような基準が設けられ、今のブルーフラッグ制度が完成したのです。
ブルーフラッグの認証基準として、「環境教育」が挙げられています。ブルーフラッグを取得するためには、ビーチの環境に関する教育を、5種類以上行う必要があります。ブルーフラッグの課題や、環境問題、SDGs実現への課題などをテーマに、様々な教育が行われているのです。
自治体の子供たちや、ビーチに訪れた人を対象に教育が行われているかが一つの基準です。ビーチの環境教育を通して、「海を守る人材を育てる」ということが目標となっています。
ブルーフラッグ取得の上で最も重視されるのが、水質です。水質測定の頻度や基準、下水や産業排水がビーチエリアに与える影響など、様々な基準が設けられています。
ビーチの水質をブルーフラッグ取得の基準に加えることで、「次世代の子供たちに美しい海を残す」ことを目指しているのです。また水だけでなく、海岸の美しさやゴミの少なさなども審査対象となっています。
ブルーフラッグの認証基準には、バリアフリーも含まれています。ブルーフラッグ取得のためには、ビーチエリアのバリアフリー化が必要不可欠。どんな人でも楽しめるビーチ作りが求められます。
ビーチマットの整備や水陸両用車椅子の導入、障がい者用のトイレの設置など、様々なことが要求されます。また近年、多言語表記の看板といった、ユニバーサルデザイン化に取り組む地域も増えています。
安心・安全なサービスの提供も、ブルーフラッグ取得のために欠かせない項目となっています。ブルーフラッグの目標は、「誰でも安心して使えるビーチ」。高い水準でのサービスが求められます。
法令遵守はもちろん、救護室や応急処理道具の整備、ライフセーバーの配置などが定められています。このため、ブルーフラッグは「安心して利用できるビーチのしるし」とも言われています。
日本のブルーフラッグ取得ビーチとして、若狭和田ビーチが挙げられます。日本を含むアジアで、一番はじめにブルーフラッグを取得したビーチとして知られています。認証を受けた2016年から2020年まで、ブルーフラッグを取得し続けているのも特徴。
海水浴場に大型のゴミ箱を設置したり、地元の人が一丸となってビーチクリーンを毎日行なったりと、自治体を挙げて様々な取り組みが行われています。美しい海を継続させるため、子供達への教育に力を入れているのも、若狭和田ビーチの特色です。
神奈川県鎌倉市にある由比ヶ浜も、日本でブルーフラッグを取得しているビーチの一つ。こちらのビーチも、2016年に日本を含むアジアで初めて、ブルーフラッグを取得しました。
ブルーフラッグ取得を受け、「もっと日本にブルーフラッグプロジェクトを浸透させよう」と、様々な活動を行なっているのも特徴。ブルーフラッグをアピールし、自治体のSDGs目標達成にも繋げようと働きかけています。
兵庫県神戸市の須磨海水浴場は、2019年にブルーフラッグを取得したビーチです。須磨海水浴場は、神戸市の中心部から電車で15分ほどの距離に位置するビーチ。アクセスの良さから、多くの観光客で賑わいます。
しかし海水浴客の増加に伴い、ビーチの環境や治安が悪化。それを受け、神戸市は「誰でも安心して使えるビーチ作りを」と、ブルーフラッグへの取り組みを始めました。海岸の再整備や騒音の規制、条例の整備などを経て、ブルーフラッグ取得に至ったのです。
Blue Flagは、世界の海を守るだけでなく、SDGsの目標達成にも貢献するプログラムです。ブルーフラッグに承認されるビーチが増えれば、世界の環境もより良いものになるでしょう。今回紹介した認証基準や日本のビーチの取り組みなどを参考にしながら、ブルーフラッグへの理解を深めてみてはいかがでしょうか。
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