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ファッションの新しい選択肢「ヴィーガンレザー」とは。従来との違いを詳しく解説
ヴィーガンレザーって何のこと?レザーとは何が違うの?気になる意味を、ヴィーガンレザーの特徴と一緒にまとめて解説。ファッションの新しい選択肢を言われている素材について、詳しく見てみましょう。ヴィーガンレザーを販売しているブランドと併せてチェックしてみてください。
2021.03.04公開
「ヴィーガンレザー(Vegan leather)」とは、人工的に作られた革の代替素材のこと。ヴィーガンは、日本語で「完全菜食主義」を意味する言葉として知られていますが、それだけではありません。「人間はできる限り動物を搾取せずに生きるべき」という主義や考え方そのものを指す場合もあります。
そのため、ヴィーガンレザーは、動物の皮を使用せずに人工的に革の繊維構造を再現したものを意味します。動物の皮全般から作られる「本革」とは、全く異なる素材です。
ヴィーガンレザーは、大きく3種類に分類されます。「合成皮革」と「人工皮革」、「植物皮革」と呼ばれるもので、すべて人工的に作られた代替素材です。
ヴィーガンレザーを扱うブランドは色々あるので、どの代替素材をメインに使っているのかチェックしておくと良いですね。数が多いのは、「人工皮革」を使っているブランド。最も数が少ないのは「植物皮革」を使ったブランドだと言われています。
ヴィーガンレザーは、「合成皮革」と「人工皮革」の2種類だけを指すこともあります。革の代替素材として長く使われてきた実績があります。
対して、「植物皮革」は全く新しい素材。実用化されるようになってから、まだ数年ほどしか経っていません。そのため、ブランドによっては、従来品の2種類のみをヴィーガンレザーと定義するケースも見られます。
「合成皮革」とは、生地や織物をベースにし、ポリウレタン樹脂や塩化ビニル樹脂を塗布して加工したもの。コーティングすることで、素材の表面層だけを本革に似せて作っています。「合皮」と呼ばれることもある素材ですね。
合皮は低コストで作れるため、大量生産に適した素材となっていますが、やや耐久性に乏しいというデメリットがあります。使用しているブランドの数は、あまり多くありません。
「人工皮革」とは、ナイロンやポリエステル繊維を立体に絡み合わせ、ポリウレタン樹脂を染み込ませた不織布をベースに作った代替素材のこと。構造としてはより本革に近く、風合いも耐久性も合皮の上を行くという点に違いがあります。
「人工皮革」は最も一般的な革の代替素材となることから、ヴィーガンレザーとして多くのブランドで扱われています。ただし、コストの面ではやや不利で、合皮よりも割高になる傾向にあります。
「植物皮革」は、植物性の原料をメインにして作られている点が、合皮と人工皮革との違いになります。原料となる植物は様々で、最も有名なのがパイナップルの葉の繊維を使った『ピニャテックス』というヴィーガンレザー。他にもマッシュルームやサボテン、ぶどうの絞りカスなどを原料にしたものがあります。
「植物皮革」は、原料の大部分が植物性素材。一部にポリウレタンが使用されているものもありますが、土に還りやすいことからサステナビリティを実現する素材として注目を集めています。しかし、全く新しい素材となるため、耐久性は未知数。合皮や人工皮革との違いを見るには、時間を必要とします。
また、コストに関しても高めになることが多く、合皮の5倍ほどになるとも言われています。扱っているブランドも少ないので、植物皮革のヴィーガンレザーは、まだまだ珍しい素材です。
ヴィーガンレザー種類と違い
種類 | 原材料 | 耐久性 | コスト |
合成皮革 | 生地・織物+ポリウレタン・塩化ビニル樹脂 | 3年ほど | 安い |
人工皮革 | 不織布+ポリウレタン樹脂 | 6年ほど | やや安い |
植物皮革 | 植物性素材がメイン | 未知数 | 高い |
日本でも有名な『Stella McCartney』は、ヴィーガンレザーの第一人者となるブランド。菜食主義者である創業者のステラ・マッカートニーが、2001年にメーカーを立ち上げました。ヴィーガンレザーが注目されるようになるずっと以前から、アニマルフリーレザーを提唱してきた実績があります。
これまで人工皮革のヴィーガンレザーを用いていましたが、近年では「Mylo(マイロ)」というキノコの菌糸体を原料にした代替素材も採用するように。植物皮革を使った製品が、2021年から販売開始される予定だと言われています。日本に上陸する日が待ち遠しいですね。
『Nanushka(ナヌシュカ)』も、2005年の創立当初からヴィーガンレザーを用いたアイテムを販売してきたブランドとして知られています。
ナヌシュカで用いられているのは、ポリエステルとポリウレタンをもとに作った人工皮革。動物由来の原材料を一切使用していない素材で、ジャケットやパンツといったファッションアイテムを展開しています。
『A.W.A.K.E. Mode(アウェイク・モード)』は、植物性素材から作られたヴィーガンレザーを使用しています。イタリアの『Coronet』というサプライヤーから仕入れたヴィーガンレザーで、成分の50%以上が再生可能なバイオ素材となっていることが特徴です。
『A.W.A.K.E. Mode』のアイテムとしては、バッグやドレス、ミディスカートなどが有名。日本でも販売されているので、再生可能なヴィーガンレザーを使ったおしゃれを楽しむことができますよ。
『Cocochi kobo』は、ヴィーガンレザーに特化した製品を販売する、日本発のブランド。バッグや財布、カードケースといった革小物を扱っています。
『Cocochi kobo』の製品は、人工皮革を材料に、すべてハンドメイドで製作されていることが特徴。価格帯も1~2万円台と手頃で、ヴィーガンレザーを使った日本製の革小物が欲しいときにおすすめです。
ヴィーガンレザーのお手入れは、本革とは違い、簡単に済ませることができます。基本的に水や汚れに強い素材であることから、拭き取るだけでOKというお手軽さ。水分や汚れが付着したときに、ぬるま湯で絞った布で拭き取り、乾いたタオルで水気を採れば完了します。
ただし、人の皮脂や汗には弱いので、使用後に放置するのはおすすめできません。使った後は、こまめに汚れを落として長持ちさせていってください。
ヴィーガンレザーには、本革のように防水スプレーやクリームも不要。使えないことはありませんが、素材によっては傷めてしまう可能性があります。
ヴィーガンレザーの製品を保管するときは、汚れを拭き取ってから、日陰で風通しの良い場所に置くようにしましょう。汚れが付着したままだと劣化の原因になりますし、直射日光や高温もヴィーガンレザーを傷めてしまいます。
また、他の衣類や小物と一緒にすると、色移りしてしまう可能性があります。ヴィーガンレザーの製品は、他のアイテムと密着したり擦れたりしないよう、注意しながら保管していってください。
ヴィーガンレザーは、動物性の原材料を使用しないフェイクレザーのこと。できる限り動物から搾取しないという考えのもと、元々人気のあった素材ですが、近年ではサステナビリティの観点からもさらに関心が高まっています。特に、植物性の原材料を用いた植物皮革が注目の的です。
ヴィーガンレザーは、まだまだ日本でも認識の薄い素材ですが、今後は注目されていく可能性があります。ご紹介した種類や違いなどを参考に、革製品を購入するときの選択肢の一つに入れてみましょう。
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