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ホームレスが生まれるのはなぜ?その原因や生活状況、私達に出来る支援とは
「ホームレス」状態の人々が生まれるのはなぜ?その原因には何があるの?気になる方のために、詳しい定義を始め、原因や生活状況などをご紹介。日本だけでなく世界でも課題とされていることなので、ぜひチェックしてみてください。私達に出来る支援についてもご提案します。
2021.03.29公開
「ホームレス」とは、家がない状態の人を表す言葉。英語の、「家がない状態」を指す形容詞である「Homeless」が由来となります。
本来は人を指す言葉ではないため、正式には「ホームレス状態の方」と表現されます。よく使用される「ホームレス」という表現は、「ホームレス状態の方」を短縮した形となる言葉です。
日本における「ホームレス状態」の定義と、海外における定義には、若干の違いがあります。日本では、都市公園や河川、道路や駅舎といった施設を起居の場所として日常生活を営んでいる場合に、ホームレス状態と定義しています。
対して、アメリカやヨーロッパの場合は定義がより広い傾向に。家を失う可能性がある人、望まない同居をしている人、DVのような不適切な住環境にいる人、福祉施設に滞在している人なども含まれる例があります。
ホームレス状態と定義される人々は、貧困を始めとした幅広い問題を含んでいることから、SDGs(持続可能な開発目標)とも深く関わってきます。ホームレス状態の方々に関する支援や対策を行うことは、SDGsの目標達成という視点からも意味のある取り組みです。
日本では、ホームレス状態の定義に当てはまる人たち以外にも、「見えないホームレス状態」の人たちの問題があります。2020年に行われた厚生労働省の調査によると、日本の定義に当てはまるホームレス状態の方々の数は、3,992人となっています。
例年の調査と比較すると減少傾向にありますが、その一方で、安定した住居の代わりにネットカフェを利用する「ネットカフェ難民」の存在も。2018年に東京都が行った調査によると、都内だけでも約4,000人の「ネットカフェ難民」が確認されています。
「ネットカフェ難民」は、公園や河川ではなく、屋内を起居の場所としていることから「ホームレス」状態とは認識されない傾向に。しかし、不安定な住環境であることには変わりありません。「見えないホームレス状態」として、新たに認識されつつあります。
ホームレス状態の方々が生まれる最も大きな原因は、仕事の問題とされています。厚生労働省が2017年に発表したデータによると、仕事の問題をきっかけにホームレス状態となった人が最も多い傾向にあります。
ホームレス状態として生活している人の26.8%は「仕事が減った」ことを原因としています。また、「倒産・失業」を原因としている人は、26.1%に上ります。
人間関係を原因に、ホームレス状態となるケースも。厚生労働省のデータによると、仕事での人間関係が上手くいかずホームレス状態となった人は17.1%となっています。
また、金銭的な問題だけではなく、社会的生活そのものを嫌っているパターンもあります。人と深く関わることなく、自由に生活することを希望するケースも存在するのです。
病気やけが、高齢といった原因で、ホームレス状態となった人たちもいます。仕事が続けられなくなり、不安定な住環境に身を置くことになったパターン。厚生労働省のデータでは、16.9%の人が該当しています。
また、こころの病気により実家で生活していた人が、親が亡くなったことをきっかけにホームレス状態となるケースもあるとされています。
女性だけに限定すると、家庭でのいざこざが原因でホームレス状態になる傾向が強いとされています。日本で不安定な住環境に身を置く人は男性が多いのですが、少数ながら女性も存在します。
厚生労働省のデータでは、調査対象となった女性の18.9%が家庭のいざこざが原因でホームレス状態に。支援するうえでも考慮しておきたい原因です。
ホームレス状態の方々の生活状況を見てみると、派遣や日雇いなどの仕事をしながら暮らす人たちがいます。全くの自給自足で生活することは難しいため、ある程度の収入は必要なのですね。大きな都市の場合だと、アルミ缶を収集してリサイクル業者に売ったり、読み捨てられた雑誌を拾って露天商に販売したりするケースも。
しかし、それでも月の収入としては数万円ほど。就職をして安定した生活を送りたいと希望する人にとっては、不十分な額です。そのため、就職に関する支援やサポートは必須。政府や地域・民間団体などが、自立支援・就労支援に関する様々な対策を行っています。
ホームレス状態の方々の食事状況は、得た収入で購入するほか、飲食店での残り物をもらうなどして賄われています。一部ですが、河川で野菜を育てたり、貝や魚を採ったりして食事を確保するケースも。
しかし、十分な食事がとれていなかったり、栄養が不足していたりすることが問題として挙げられます。そのため、支援団体における炊き出しや、栄養のある食事の配布といった対策が必要とされています。また、炊き出しには一般の方とホームレス状態の方が交流を持ち、理解を深めるという側面も持ちます。
日本でホームレス状態と定義されている人の多くは、公園や河川、路上や駅舎といった場所で生活しているとされています。また、「見えないホームレス状態」と呼ばれる人は、ネットカフェやマンガ喫茶といった場所を利用するケースが多い傾向にあります。
家やアパートなどに住み、住所を得ることは、就職を希望する人にとっても必須。病気のリスクを高めないためにも意味があります。
政府やNPO団体などでは、公共施設の無料開放や賃貸マンションの一室を提供するなどの対策が。また、安価な賃貸住宅の情報や、賃貸に必要な保証制度などの情報を提供するといった対策も見られます。
ホームレス状態の方々の生活においては、健康状況も大きな課題。野宿に近い状況で生活しているため、病気のリスクが高まるという問題があります。また、日本のホームレス状態の方の半数以上は高齢のため、健康面の悪化は避けられないとも言われています。
しかし、医療保険がなく経済的な問題もあるため、病気になっても医療サービスを受けことが難しいのも現状。対策として、医療者による無料相談会や、医療機関による無料低額診療事業などが見られます。
ホームレス状態の方々に関する対策や支援があっても、情報が届いていないため抜け出せないというケースが見られます。支援に関する情報にアクセスできない、存在自体を知らないといったパターンです。
どのような対策や支援でも、必要な場所に情報が届いていなければ効果は発揮されません。就職支援を求められる場所はどこか、病気のときはどこを頼れば良いのか、炊き出しはどこで受けられるのかを知ってもらうのは大切なこと。情報提供や周知に関して、まだまだ課題が残っていると言われています。
支援を受けることを避けて、ホームレス状態を続けるケースもあります。理由は、人によって様々。支援されることに申し訳なさを感じる人もいれば、施しは受けたくないと拒否する場合も。
また、支援を受けて指定された宿泊施設に入っても、病気や障害などを理由にいじめに遭うケースが。人によっては集団で生活することの煩わしさを感じることもあると言われています。宿泊施設での生活に耐えきれず、受けた支援を避けてホームレス状態に戻る可能性があるのです。
就職へのハードルが高いことも「ホームレス」状態が続く理由の一つ。住所不定で電話番号も持たないことが多いため、就職のための活動もままなりません。
また、学歴や経験、技能や資格を持たない場合は、さらにハードルが高くなります。努力しても就職に繋がらず、心が折れてしまう人も。就職支援を受けていても、「ホームレス」状態から抜け出すのは難しいと言われています。
寄付は、ホームレス状態の方々を支援するために、手軽にできる活動の一つです。金銭的な寄付だけでなく、炊き出し用の食材や衣料品、毎日の生活に必要な日用品など、様々な形で行うことができます。炊き出しや衣料品・日用品の提供は、生活を助けるだけでなく、病気のリスクを下げることにも繋がります。
また、直接的な寄付ではなく、「ビッグイシュー」の購入で間接的に支援する方法もあります。「ビッグイシュー」とは雑誌のこと。ホームレス状態の方々の独占販売事業とすることで、定価の半額が販売者の収入になります。内容も興味深いものばかりなので、ぜひ購入してみてください。
積極的に支援してみたい方は、ボランティア活動に参加するのもおすすめ。炊き出しの調理や配布、情報提供のためのパンフレット配布、講演会や交流会といったイベントなど、人手を必要としている場所はたくさんあります。
また、専門知識や技術を持つ方は、プロボノとして参加する方法も。炊き出しでもイベントでも、自分ができる範囲でOKなので、ボランティアとして活動してみましょう。
理解を広げることも、ホームレス状態の方々への立派な支援になります。寄付をしたり炊き出しをしたりするだけではないのですね。不安定な住環境に陥ることは、自己責任と見られがち。しかし、どうにもならない理由からホームレス状態となるケースは多いと言われています。
また、ホームレス状態であることから公園などから不当に差別されたり、暴力を振るわれたりするケースもあります。理解を深めることは、偏見や差別をなくすための第一歩。自分自身の知識を深めたり、SNSなどで発信したりしてみましょう。
ホームレス状態の方々が生まれる経緯は様々。とくに仕事の問題や、病気にけが、高齢などが最も大きな原因とされています。一度「ホームレス」状態になると、個人だけの力で復帰するのは実に困難。そのため、色々な対策や支援が必要です。
行政に任せるだけでなく、個人でも行える支援があるので、気になる方はぜひ参加してみてください。ホームレス状態の方々の現状を知って、課題を見つめるだけでも、大きな意味がありますよ。
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