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市場に出回らない"規格外野菜"とは?日本農家の現状と再利用のための取り組みをご紹介
皆さんは「規格外野菜」という言葉をご存知ですか?これは、ある一定の規格に反しているという理由で、市場に出回ることがない野菜のこと。食品ロス問題にも大きく関わるとされています。今回は、規格外野菜の問題や日本農家を取り巻く現状をご紹介します。
2021.04.02公開
規格外野菜とは、定められている規格を満たしていない野菜のこと。流通や取引をスムーズに行うため、野菜には形や色、傷の有無などの基準が細かく定められています。この規格をクリアできた野菜のみが、スーパーなどに流通するのです。
野菜の等級はA級・B級・C級に分けられており、私達がスーパーで見かけるもののほとんどがA級。形や色の悪いB級やC級でも安値で取引されており、Cランクに満たないものが規格外野菜となります。
規格外野菜の大半は、市場やスーパーなどに流通することができないため、廃棄されてしまいます。加工品として市場に出回るものもありますが、それはほんの極一部。形が悪いものは機械で加工しにくいというデメリットがあるため、再利用を断られるケースが多いのです。
生産される野菜の約25パーセント前後、年間200〜250万トンの野菜が規格外として廃棄されている、という推察も。形や色が悪いからと言って、味が良くないとは限りません。規格外野菜を廃棄するということは、本来食べられるはずの食品を捨てていることと同義なのです。
規格外野菜は、隠れ食品ロスの原因だと言われています。農林水産省が発表している年間の食品ロスは約600万トンほどですが、この中には規格外野菜は含まれていません。食品ロスとして数えられているのは、外食業や製造業などの食品関連事業者と、一般家庭から生まれるゴミだけ。
畑で収穫され、市場に出回る前に捨てられてしまった野菜は、食品ロスにはカウントされないのです。規格外野菜がどれだけあるかという推察はありますが、実際の数字はハッキリ分かっていないのが現状。日本には、このような「隠れ食品ロス」がたくさんあるのです。
次の記事では、現在の日本の食品ロスの実態を解説しています。海外に比べどのように違うのか、自分たちにできる取り組みは何か、是非考えてみてください。
野菜の規格を決める基準として用いられているのが、一定のサイズ感。小さすぎてもいけませんが、大きすぎるものもダメ。決められた範囲のサイズに収まっていないと、規格外野菜になってしまいます。
規格でサイズが厳密に決まっているのには、きちんと理由があります。スーパーなどで並べられる野菜の大きさが大小バラバラだと、値付けが難しくなってしまいますよね。陳列させた時の見た目も悪く、購買意欲を下げてしまうことに。こういった観点から、同じ大きさの野菜を求める傾向が強いのです。
野菜に傷が付いていないかも、野菜の等級を決める上で重要視されるポイント。小さな傷が一つでもあると、その野菜はA級になれず、スーパーに陳列されにくくなります。大きな傷があるものは規格外野菜とされ、加工品にもされず廃棄されることがほとんどです。
私たちが市場やスーパーなどで野菜を買う時、自然と傷がなく綺麗なものを選びますよね。傷が付いている部分をカットすれば他の野菜と変わらなくても、やはり見た目が美しい方を選ぶのが人間心理。
傷がある野菜は、例え販売したとしても売れ残ってしまう可能性が高いのが現実。仕入れや陳列などの手間を考えた時、「傷があるものは取り扱いたくない」と思う業者が多いため、傷の有無が規格に入ったとされています。
決められた美しい形になっているか、変に曲がっていないかという点も、規格を決める上で重要視されるポイント。例えばきゅうり。大きく曲がっているものよりも、真っ直ぐにピンと育っているきゅうりを選ぶ人が圧倒的に多いです。
また大きく曲がった野菜は、加工品としても使いにくいと言われています。加工する際、あまりにも形が歪なものは機械に通らないというのが大きな理由。味や色がいくら良くても、形が悪いというだけで廃棄される野菜は数多くあります。
規格外野菜が生まれる問題には、見た目の良し悪しにこだわる消費者の気持ちが関係しています。「色や形が綺麗なものしか買いたくない」と考える消費者が多いのが現実。特に日本人は、見た目の良し悪しにこだわる気持ちが強いとされています。
そのため高い水準での均一な品質が求められ、少しでも基準から外れたものは捨てられてしまう。規格外野菜を少しでも減らすためには、私たちの意識を変えていかなくてはなりません。
天候や気温、土の状態などの自然環境も、規格外野菜が生まれる原因の一つ。野菜は本来、自然環境の中で育つもの。いくら農家さんが手を尽くしても、工業製品のように形や色を統一することはできません。
天候や気温が少しでも乱れれば、野菜の形やサイズは大きく崩れてしまいます。日本は諸外国に比べ、台風や大雨などの自然災害が多い国。そのためどうしても、形がいびつになってしまう野菜が増えてしまうのです。
「市場に出回らないから」という理由で捨てられてしまうことが多い規格外野菜ですが、中には様々な用途で使われているものも。規格外野菜がどのように使われているのか、以下を参考にしてみてください。
規格外野菜の主な活用方法として知られているのが、加工品にするというもの。例えば大きく曲がってしまったきゅうりは、そのままでは規格外野菜になるため市場で販売できません。
しかし小さくカットしてピクルスや漬物などにすれば、見た目の良し悪しが関係なくなるため販売できます。ただしどんな商品でも加工品にできる、というわけではありません。加工の際には機械が多く使われるため、あまりに形が不揃いなものは使用されないという問題も。
現在の規格外野菜の活用法として、飲食店への販売もあります。飲食店では野菜を調理して消費者に提供するため、見た目の良し悪しより味が問われることが多いのが特徴。
例え見た目が規格外野菜であっても、味や品質が良いものは、レストランや飲食店に買い取ってもらえるというメリットが。農家さんが飲食店向けに、規格外野菜を販売するWebサービスなども展開されています。
#プレゼント#深谷ねぎ の発送をしております。
— タダヤサイ (@tada8sai) February 6, 2021
今回の規格外ネギはとても細いので
当初2kg(2袋)のプレゼントでしたが
3袋(3kg~4kg)に増量して発送してます
当選者の皆様
商品到着まで
もう少々お待ちください#フードロス pic.twitter.com/VsEBjoMRep
規格外野菜を再利用するサービスとして知られているのが、「タダヤサイ」。会員登録をして商品に応募することで、無料で野菜がもらえるというものです。ただし必ず野菜が貰えるというわけではなく、応募した抽選に通らないといけません。
またタダヤサイでは、規格外野菜の無料配布だけでなく販売も行われています。「抽選の結果が待てない、すぐに野菜が欲しい!」という時は、そのまま購入することもできるんですね。
únicaも、色や形に問題があるとされる野菜を取り扱っているサービス。市場やスーパーには出回らない規格外野菜を、リーズナブルな価格で購入することができます。única最大の特徴は、農家さんと消費者が直接コミュニケーションを取れるという点。
生産農家さんの顔がわかるため、安心してサービスを利用できるという声が多いです。また農家さんにとっても、廃棄していた野菜分の売り上げアップ、畑で発生する食品ロス問題の解消など、メリットが多いのが特徴。
去年も好評の南阿蘇のピーマンが出荷スタート🙌✨今年も気合が入った規格外のピーマンが早速届きました笑 pic.twitter.com/CLQRVHBnpv
— フリフル (@furifurucom) June 19, 2020
「フリフル」とは、抽選で規格外野菜を無料で受け取ることができる、というサービス。野菜だけではなくフルーツなども取り扱われており、品揃えが豊富なのが魅力。また商品は農家から直送されるため、ベストな状態の青果が楽しめます。
フリフルの最大の特徴は、会員登録ではなく「サポーター登録」というシステムを取っていること。作物の良い点も悪い点も農家さんに伝え、共に良い商品を作ることを目的としています。作り手から直接作物が届くという点もポイント。
最高気温3度/最低気温-10度。暖かい日差しの江別です。
— おにおんぼうず@野菜ソムリエプロ (@onionboz) February 13, 2021
風邪を引かないように、体の中から予防したいところ。ビタミンC豊富で魅力いっぱいの柑橘たちが出回るこの時季、強い味方にして元気に過ごしたいものですね🥰
サラダもおススメ♪
佳い週末を~☆#野菜ソムリエプロhttps://t.co/YL4PX7n21I pic.twitter.com/SReYhD9V1i
「おにおんぼうず」も、日本の規格外野菜を再利用するために生まれたサービス。一生懸命育てられた野菜なのに、見た目に問題があるという理由だけで捨てられるのはもったいない。美味しくて安心な野菜を食べて欲しい。この想いから生まれたのが、おにおんぼうずなのです。
おにおんぼうずでは、野菜の生産者さんのプロフィールが詳しく載っているのが特徴。農家さんの生の声や、どんな思いで野菜を育てているかというこだわりが一目でわかるようになっています。美味しい北海道の野菜を楽しみたいなら、おにおんぼうずを利用してみて。
「CLEAN FOOD」は、市場に出回らない規格外野菜を加工品として再利用するサービス。食べられるのに捨てられてしまう野菜や果物を活用し、スムージーを生産しています。
CLEAN FOODのスムージーには、砂糖や添加物、化学物質は一切使用されていません。野菜が不足気味だと感じる人、オーガニック商品にこだわりたい方におすすめ。飲むことで食品ロス問題の解決にも繋がる、社会にも嬉しいサービスです。
アメリカでは、規格外野菜を自宅に配送する「Imperfect Produce」というサービスが行われています。規格外として廃棄される予定の野菜を農家から購入し、通常より30〜50パーセント引きした価格で販売しています。
農家は規格外野菜をお金に変えることができますし、消費者は美味しい野菜をリーズナブルな価格で購入できる。中身がランダムに決まる商品も取り扱われているので、「買う楽しさ」を得られるのも魅力。
イギリスでは、スーパーで規格外野菜を取り扱う、という取り組みが行われています。リーズナブルな価格で商品を販売するスーパーでは、規格外野菜の詰め合わせセットを販売。大量の野菜を安く購入できます。
また高級志向のスーパーでも、「食品ロス問題について考える運動」として規格外野菜を販売。農家は規格外野菜の廃棄量を減らすことができ、スーパー側は新しい顧客を得られる。規格外野菜がWIN-WINの関係を作ったとして、日本でも注目されているサービスです。
フランスでは、規格外野菜だけを販売するスーパーが開店しました。これは大手スーパーである「カルフール」の取り組み。「野菜の厳しい規格に反したものだけを売る」がコンセプトになっています。
当時のEUの法律は非常に厳しく、生産量の約97パーセントが「違法作物」扱いになっていたという現状がありました。この法律改正を目指して、規格外野菜のみを売るサービスを始めたのです。
流通や販売の観点から考えると、野菜の規格は必要です。しかしその厳しい規格の影響で、捨てられてしまう野菜が大量にあるのが現実。規格外だったとしても、多くの野菜は食べることが出来るものなのです。日本の農家さんが直面している課題や、食品ロス問題などから、規格外野菜の再利用について是非考えてみてください。また、そのようなサービスに積極的に関わり、食品ロスをなくしていきましょう!
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