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ダイバーシティを目指す社会について。多様性の実現に向けた動きとは
ダイバーシティって何のこと?多様性の実現ってどんなことを意味するの?日本でもよく耳にするようになってきたダイバーシティの意味を、詳しくご紹介。推進することのメリットや課題、企業における実際の取り組みなどと一緒にぜひご覧ください。
2021.03.16公開
ダイバーシティとは、多様性を意味する言葉。英語の「Diversity」を語源としていて、性質の異なるものが幅広く存在していることを定義します。
とくにビジネスにおいて使用されることが多い言葉。多様な人材を生かす企業戦略を意味する「ダイバーシティマネジメント」や、多様化する市場ニーズやリスクに向けた対応力を高める「ダイバーシティ経営」といった使い方がされています。
多様性を意味するダイバーシティは、主に4つの概念から成り立っています。ビジネスにおいて、組織内にはさまざまなタイプの社員が属することになります。それぞれの「違い」を考慮したうえで、組織のパフォーマンスを向上させるために、概念を理解することは必要です。
4つの概念の詳しい内容については、下記のリストをチェックしてみてください。ダイバーシティを成功させるために、組織に属するすべての人で共有しておくことが大切です。
ダイバーシティの4つの概念
ダイバーシティにおける「違い」の基準は、場所や状況で異なってきます。ダイバーシティに含まれる「違い」には、2種類の属性が。
第1属性とされるのは、「性別・年齢・国籍・人種・障がい・性的マイノリティ(LGBT)」といった外見的な要素が強いものです。第2属性では、「雇用形態・婚姻状況・家族構成・嗜好・趣味・学歴・価値観」といった、表面的には見えない要素が含まれます。(第1属性を"表面的な多様性、第2属性を"深層的な多様性"と呼ぶことも)
例えば、「性別」という「違い」を見た場合、欧米では「白人女性」がマジョリティ、「日本人女性」がマイノリティという基準になります。しかし、場所が日本になると「白人女性」はマイノリティ、「日本人女性」はマジョリティという基準に。そのため、「違い」の基準を意識しておくことが大切になります。
日本社会において、多様性を意味するダイバーシティの概念は、まだまだ発展途中。1960年代にアメリカで概念が誕生したのですが、日本で意識されるようになったのは2000年代に入ってからと言われています。
また、ダイバーシティ経営やマネジメントを取り入れているものの、現在のところは女性の活躍推進という流れが主流。それでも、属性の「違い」を踏まえた多様性の概念の浸透は進みつつあるので、これからが期待されています。
ダイバーシティの推進は、日本社会にとって必要とされています。人口減少が続いている日本では、これから労働人口が慢性的に不足することに。そのため、女性だけでなく、高齢者や障がい者、外国人といった多様な人々の雇用が求められています。
また、グローバル化が進んでいることからも、多様な人材を確保し、多様な市場環境に対応していく必要も。多様な背景を持つ人々が持つ、様々な視点や能力から、新たなチャンスが生み出されていくと考えられています。
ダイバーシティに関する取り組みの事例は、日本社会でも少しずつ増えています。概念が浸透するにつれて、ダイバーシティ経営やマネジメントを意識する企業も多くなっているのですね。
制度を取り入れて、女性の活躍推進以外にも幅広く対応。高齢者・障がい者・外国人・LGBTの活躍推進といった取り組みも普及しつつあります。
ダイバーシティ推進のための制度を取り入れることは、人材の確保に繋がります。社員の力は、性別や国籍といった属性に左右されずに評価されるべきもの。多様な背景を持つ人を幅広く採用することで、必要とされる人材が得られる可能性が高くなります。
また、多様な背景を持つ人たちが働きやすい制度が整っていると、それだけ魅力的な環境に。仕事と育児が両立できる職場、週5日・8時間勤務に囚われない職場、バリアフリーな職場などの例が挙げられます。魅力的な職場であれば、それだけ応募母数も増えるため、必要とする人材がさらに確保しやすくなります。
日本社会でダイバーシティを推進することは、市場における優位性向上にも繋がります。多様な背景の人材を採用するということは、それだけ多様な市場に対応が可能になることを意味します。
例えば、若い社員が中心であった企業が高齢者を採用することで、年配のユーザーのニーズを汲み取った商品開発ができるようになったケースがあります。経験を活かした知恵の提供も可能に。
ダイバーシティ制度を取り入れることで、商品開発や営業、マーケティングなどあらゆる分野で優位性が向上すると期待されています。
新しいアイデアが生まれやすくなることも、日本社会でダイバーシティを推進することのメリットになります。属性が均一的な組織では、似たような視点や価値観に偏りやすい傾向が。
逆に言えば、多様な人材を採用している企業であれば、多角的な視点や価値観から斬新なアイデアが生まれる可能性が高まります。それぞれが持つ多様な経歴や個性、能力を発揮し、刺激を受け合うことで想像効果が生まれることも期待できます。
ダイバーシティを推進する過程では、意識改革の必要性という課題が待ち受けています。多様な人材を採用することは、それだけ色々な「違い」が生じ、組織内に軋轢や誤解が発生しやすくなることを意味します。様々な属性の人材が採用されればされるほど、習慣や価値観の違いが多様に。
そのため、特定の属性の人にとっては何気ない言動でも、他の属性の人にとっては不快感を種になる可能性が。多様性に対してどのような受け止め方をすれば良いのか、会社での働き方がどのように変わるのか、社内教育の場を設けて全体の意識改革を図る必要があるとされています。
ダイバーシティを推進するには、環境の整備も不可欠となります。多様な背景の社員のコミュニケーションを促進するための談話室やミーティングルームの設置などが例として挙げられますね。対話や意見の交換によって、刺激を受け合える環境づくりは必要です。
また、託児所の設置や在宅ワーク、バリアフリーといった多様な背景の人材が必要とする環境整備も必要。採用した人材の個性や能力が、最大限に発揮できるよう整えていくことが大切だと言われています。
『サイボウズ株式会社』とは、インターネット・イントラネット用のソフトフェア開発と販売を専門とした会社。ダイバーシティマネジメントに会社全体で取り組んでいて、多様な人材の多様な働き方を可能にする制度を数多く取り入れています。
例えば、育児・介護休暇や、育児・介護のための短時間勤務といった制度は、事実婚・同性婚・法律婚の区別なく取得可能。在宅勤務や子連れ出勤制度も取り入れ、副業も自由に行うことができます。ダイバーシティマネジメントの成功例として、取り上げられることが多い取り組みです。
世界有数の自動車メーカーである『日産自動車株式会社』では、女性社員の採用強化および管理職拡大といった取り組みに力を入れています。
1999年から取り組みをスタートさせ、現在では女性管理職の比率目標を、グローバルで16%、国内で13%とすることを掲げています。女性のニーズを反映させることで大ヒットとなった、日産『ノート』の商品企画責任者も女性です。
また、多様な組織をマネジメントできるリーダーの育成に関する取り組みも。女性管理職においても、マネジメントスキルが向上できる施策を導入しています。
文房具メーカーの『コクヨ株式会社』は、障がい者の雇用に積極的な企業。ダイバーシティという概念が普及する以前どころか、1940年という早い段階から制度を導入してきました。そのため、障がい者雇用に関するダイバーシティマネジメントの分野で注目される企業の一つに数えられています。
2003年には特例子会社である『コクヨKハート株式会社』を設立し、障がい者の雇用を拡大。2006年には、知的・精神障がい者の雇用を目的とした『ハートランド株式会社』も設立しています。
長野県にある製造業の『株式会社小川の庄』は、高齢者の雇用を中心とした取り組みを行っています。高齢者の雇用創出と村おこしを目的として、昭和61年に設立された会社ですが、ダイバーシティの普及とともに高齢者雇用に関するマネジメントが注目されています。
「60代入社・定年なし」をスローガンに高齢者の採用を継続するとともに、若手社員の採用も促進。現在は若手が仕事の効率化を担い、高齢者が熟練の技と知恵を提供、中間層となる40~50代がマネジメントを行うという役割分担が。平成28年の段階で、60歳以上の社員が半数近くを占めているとされています。
『株式会社小金井精機製作所』は、自動車エンジンや航空機エンジンといった精密部品の製造を請け負う会社。若手技術者が不足してきたことをきっかけに、海外からの人材を受け入れるようになりました。2007年にベトナムの大学からの紹介があったことから、ベトナム人学生の採用が始まり、現在まで継続しています。
現在では、企業全体で43名のベトナム人が正社員として勤務。日本語学校に通う支援の実施や、来日したベトナム人社員の配偶者の積極採用など、色々な制度を取り入れています。外国人採用のノウハウを積み上げ、ベトナム以外の国からの採用も始まりました。
多様性を意味するダイバーシティの概念は、少しずつ日本社会に浸透してきています。海外と比較するとまだまだ未発展ですが、詳しい意味や具体的な取り組みを知っておくことは大切ですね。
自分自身を含めて、一人ひとりが持つ属性や能力は実に多様なもの。それぞれの力を十分に発揮するためにも、ダイバーシティのことを知って、今以上に多様性を視野に入れていきましょう。
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