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自然と共生する暮らしをデザイン。今こそ知りたいパーマカルチャーの定義とは?
皆さんは、「パーマカルチャー」という言葉の意味をご存知ですか?持続可能な社会作りが提唱されている今、注目されている活動なのです。今回はパーマカルチャーの定義や意味、具体的な活動についてご紹介。暮らしにパーマカルチャーを取り入れる方法もまとめています。
2021.04.14公開
パーマカルチャーとは、人と自然が共に豊かに安っていけるような関係を築く、ということを目的にしたデザイン手法。パーマネント(永続性)、文化(カルチャー)、農業(アグリカルチャー)の3つを組み合わせてできた言葉です。
「デザイン手法」とは言っても、物や形などを作り出すことではありません。人間と自然が搾取し合うことのないよう、持続可能な社会システムを形成していくこと。これが、パーマカルチャーの目指しているデザインです。
パーマカルチャーが提唱されたのは1970年代。オーストラリアで教師をしていたデイヴィット・ホルムグレンと、ビル・モリソンが創始者です。2人は漁師や猟師として働いていた経験があり、周りの自然が破壊されていることに危機感を覚えました。環境をあるべき姿に戻すために始めた活動が、パーマカルチャーなのです。
ビル・モリソンはパーマカルチャーの最終目的を、「地球全てを森で埋め尽くすこと」だと定義。森にいる生物と共に生き、自然で取れるものを食べる世界が、パーマカルチャーの創始者が目指す世界観なのです。
パーマカルチャーのデザイン手法は、農業や文化だけに留まりません。建物やエネルギー、人同士のコミュニティなど、生活の全てがデザインの対象となっています。
人の利益ばかり考えているデザイン手法は、自然を破壊してしまうため長く続きません。環境保全にばかり着手していると、今度は人間の生活が危うくなってしまう。どちらかに偏るのではなく、お互いを搾取することのない、永続的で持続可能なシステムを作ること。これこそ、パーマカルチャーで重要視されていることなのです。
パーマカルチャーには「3つの倫理」というものが定められています。これは、パーマカルチャーを行う上で大切になる、行動基準や価値観のこと。社会や自然が本当に望んでいるものは何か考え、それを実現するために自分ができることを探す。これこそ、パーマカルチャーが求めている持続可能な社会作りに大切なことなのです。
3つの倫理のうち1つ目は、「地球への配慮」。人間の生活や文化にばかり注力しすぎていると、自然環境が破壊されてしまいます。人間的には持続可能な社会になりますが、地球や自然を搾取する事態になってしまう。こういった事態に陥らないよう、環境に配慮して暮らしていこうという倫理です。
2つ目は「人への配慮」。これは先ほどの「地球への配慮」とは逆で、自然保護に重きを置きすぎると人の生活が犠牲になる、というもの。地球環境にも配慮しつつ、人間が暮らしやすい持続可能な世界を作る、ということが目的。また自分自身や他人にパーマカルチャーを強要しすぎない、という意味も含まれています。
3つの倫理のうち、最後は「余剰物の共有」というもの。自然を生かした生産活動に参加して恵みを受け、それを他の人と共有する、ということを目的としています。また、人間がそれぞれ持っている才能を社会のために用いて、より豊かで持続可能な社会を築いていく。これも「余剰物の共有」において重視されている事柄です。
パーマカルチャー 3つの倫理
また、パーマカルチャーは3つの倫理に加えて、12の原則も定められています。詳しくは以下の記事に記載されていますので、是非ご参考になさってください。
日本の取り組み例として挙げられるのが、「パーマカルチャー北海道」というプロジェクト。2013年に、北海道でパーマカルチャーデザインの講座が開催されたのがきっかけとなっています。講座に参加した人々が中心となって、風土に適した持続可能型社会を目指すために発足したのが、「パーマカルチャー北海道」なのです。
パーマカルチャー北海道では農業だけでなく、様々な職業の人々が共に活動しています。農業はもちろん、北海道の文化も大切にできる社会作りに励んでいますよ。基本的な活動内容は、パーマカルチャーについて学べるワークショップや講座などの開催。エコビレッジライフの体験塾も開かれています。
Point
「環境に負担がかからない暮らし」と「お互いに支え合う仕組み」が両立された、持続可能な新しい社会のモデルを目指すもの
日本で行われている取り組み例として、パーマカルチャー・センター・ジャパンも有名です。1996年に神奈川県で設立され、パーマカルチャーの手法などを日本国内に広める活動を行なっています。
敷地内には水田やガーデンなどがあり、パーマカルチャーの理念に基づいた農業が行われているのも特徴。またパーマカルチャー・センター・ジャパンでは、「パーマカルチャーデザイナー」という資格を取ることができます。この資格が取れるのは日本でこの施設のみ。独自の活動に取り組んでいる団体なのです。
パーマカルチャー関西も、パーマカルチャーに積極的に取り組んでいる日本の団体。現代の社会や文化、自然環境を守るため、パーマカルチャーの普及に尽力しています。
主な活動内容は、パーマカルチャーに関するイベントや講座の主催。パーマカルチャーをよく知らない人でも気軽に参加できるようなコースを開催し、持続可能な社会作りに貢献しています。
日本のパーマカルチャー団体として知られているのが、岩手の自然農園ウレシパモシリ。ウレシパモシリには、「自然界そのもの」という意味があります。自然との共生を通して社会や文化を豊かにする、そういった願いで作られた団体なのです。
自然農園ウレシパモシリでは、元々の自然や地形などを生かした農業を行なっています。無肥料・無農薬の自然栽培や、輸入飼料の不使用など、「身の回りの自然にあるもの」のみを使っているのが特徴。宇宙や自然、人から何も搾取しない農業を目指しています。
海外の取り組み例として挙げられるのが、イサカエコビレッジという活動。1991年にアメリカで設立され、持続可能な暮らしを目標とした社会作りに取り組んでいます。環境に負荷をかけず、人の豊かさも守ることができる居住地を提供しているのが、イサカエコビレッジなのです。
イサカエコビレッジでは、敷地の10パーセントを居住地としており、残りの90パーセントには自然環境がそのまま残されています。またパーマカルチャーに則った農業講座も開催されているのも特徴。
クリスタルウォーターズは、パーマカルチャー発祥の地であるオーストラリアで生まれた海外団体。1987年に立ち上げられ、世界で初めてのエコビレッジを創立しました。
持続可能な暮らしと社会の実現を目標とし、640エーカーの敷地に居住地を設立。敷地には、住民が植林を行なって作り上げた森林が存在します。森林が完成したことにより、野生動物が暮らすようになったという成果も。積極的にパーマカルチャーに取り組んでいる海外団体なのです。
海外での取り組み例として、アースソングエコビレッジも挙げられます。ニュージーランドで創立されたコミュニティで、家族概念や住宅に囚われない関わりを作る、ということが目的。
各自が専用の住居で暮らしながら、ランドリールームやキッズルーム、食堂などを共有しています。住居の周りには住民が使うことができる農園もあり、パーマカルチャーの理念に基づいた作物作りが行われているのも特徴。
パーマカルチャーの手法として有名なのが、積層マルチという方法。積層マルチとは、刈り取った草や新聞紙、海藻や干し草などを4層に積み重ねたもの。炭素質の層と窒素分の層を交互に重ねることで、雑草の生育を抑える、土壌を改良するなどの働きに期待できるのです。
化学物質は一切使用せず、土を豊かにすることができる方法なのです。材料をたっぷり使うため、小さな農園などで採用されているのも特徴。
キーホールガーデンは、海外の農園で積極的に採用されているデザイン手法。様々な形がありますが、基本的には円形に整えた植床にキーホールを穿いたものです。
キーホールの丸い部分が植床の中央に来る形にすることで、種を蒔いたり収穫したりするのが容易になる、というのがメリット。また養分が集積しやすく、肥料を撒かなくても食物の健康状態を守れるのも魅力です。
スパイラルハーブガーデンも、パーマカルチャーのデザイン手法として有名なもの。菜園を螺旋状に作ったもので、日当たりや湿度の違いを生み出す方法です。
環境の変化を作り出すことで、日当たりが良い場所を好むものや湿ったところで育つ食物など、様々な植物を育てられる。これがスパイラルハーブガーデンのメリットなのです。
パーマカルチャーを実現するためには、まず考え方や実行方法を学ぶことが大切。パーマカルチャーがどんなものか、どういった活動が行われているのか知って初めて実行に移すことができるのです。
実際に講座を受けてみたり、パーマカルチャーについての本を購入したり、という方法が一般的。またYoutubeなどのサイトで、パーマカルチャーについての解説動画を観てみるのもおすすめです。
パーマカルチャーを日常に取り入れたいのなら、使えるものは捨てずに再利用しましょう。物を大量に捨てるという行為は、ゴミを増やして地球環境破壊の原因を作る可能性があるもの。
物を捨てずにリサイクルやシェアを活用することで、地球環境の破壊を防ぐことができ、持続可能な社会作りに貢献できます。フリマアプリを使って物を販売する、友達や家族と物を交換するなどの方法で、パーマカルチャーに取り組んでみて。
オーガニックで作られた物を購入する、という方法もおすすめ。オーガニックで生産された商品を買うことは、環境保護に努める農家をサポートするということ。間接的ではありますが、環境を守るパーマカルチャーに繋がるのです。
また味噌などの調味料を、原材料から自分で作るという方法もあります。必要なものは必要なだけ作ることにより、廃棄物を出さない持続可能な暮らしに貢献できますよ。
パーマカルチャーとは、人の生活文化と自然環境の共存を目指すシステム。パーマカルチャーを意識することで、人にとっても自然にとってもメリットが大きい、持続可能型社会を作ることができます。今回紹介した日本や海外の取り組み例などを参考に、パーマカルチャーを暮らしに取り入れる方法を考えてみて。
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