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最近よく聞く"ジェンダーレス"の意味とは。男性・女性の差別をなくす社会を目指して
近年「ジェンダーレス」という言葉がよく聞かれますが、どういった意味なのかご存知ですか?今回は、ジェンダーレスの詳しい意味や定義について解説していきます。ジェンダーレスの表現や、社会に求められることをまとめていますので、是非参考にしてください。
2021.04.24公開
ジェンダーレスとは、生物学的な性別を前提とした社会的・文化的な差をなくす、という意味の言葉。今の世の中には、男性だからこういったファッションをすべき、女性は髪の毛を長くするべきといった固定概念がまだまだ存在しています。同じ看護師という職業であっても、女性は看護婦、男性は看護士など、異なる呼び名で表現されていたことも。
性別によって生き方や職業などが決められてしまうのはおかしい、として広まったのが、ジェンダーレスという考え方なのです。ジェンダーという概念そのものをなくし、個人の意思を尊重した社会を作る。これが、ジェンダーレスの目指す社会です。
ジェンダーレスに似た言葉として「ジェンダーフリー」がありますが、この2つは意味が異なります。ジェンダーレスは固定概念を捨てて、性差をなくすという考えを意味するもの。一方ジェンダーフリーは、生物学的な性別や役割に囚われることで発生する社会的差別をなくし、誰もが自分の望む生き方ができるようにする、という考えを意味します。
ジェンダーフリーとは、男性が働きに出る・女性が家庭を守るという、ステレオタイプの考えに対抗する形で生まれた考え方。1990年代から日本で広まり、学校教育などでも取り扱われてきました。どんな人も自由に生きられる世の中を作るのが、ジェンダーフリーの目的なのです。
ジェンダーレスは、LGBTの考え方と混合されることが多い言葉でもあります。ジェンダーレスは、性別の概念を取り払って自由な選択をするという、性表現の考え方です。一方Xジェンダーやクロスジェンダーは、自分の性別を男女という枠組みに当てはめることができない、というもの。
ジェンダーレスは、性別による差を無くすという考えなので、恋愛対象や性自認がハッキリしていることが多いです。一方Xジェンダーやクロスジェンダーは、自分の性別や恋愛対象がわからないという状態。性表現の考え方か、性自認に関係するかが両者の大きな違いなのです。
こちらに関連し、次の記事では、セクシャルマイノリティと呼ばれるジェンダーの種類をご紹介しています。男女というたった2種類に留まらず、数多くの様々な性自認が存在しています。ジェンダーの種類についてより広く知りたいという方は、是非覗いてみてください。
近年、ジェンダーレス社会の推進が進められていますが、実は反対意見が多くあるのも事実。これは、ジェンダーレスの「性別に囚われず自由に生きる」という考えが、誤った方向に解釈されてしまっているためです。
例えば「これまでの恋愛観が破壊される」などの意見や、「ひな祭りなどの伝統的文化がなくなる」といった批判まで。男らしさ・女らしさという区分が取り払われれば、社会の秩序が揺らぐのではないか、という懸念が起こっている状態です。
このような解釈が広まった結果、社会でジェンダーレスを糾弾しようという動きも起こりました。これは「ジェンダー・バックラッシュ」と呼ばれるもの。誤った認識を取り除き、正しい考えを広めることこそ、ジェンダーレス社会の実現に欠かせないものなのです。
ジェンダーレスの表現として、メイクが挙げられます。ジェンダーレスの人の場合、身体的性別が男性である人が、メイクをすることが多いです。ただし、「女性になりたいから」という目的でメイクをするのではありません。あくまでジェンダーレスの表現としてのメイクです。
またジェンダーレス女性の場合も、薄すぎず濃すぎず、中世的なメイクを行う人が多いです。これまで「女性らしい」とされてきたふんわりとしたものではなく、スマートな雰囲気を目指す傾向にありますよ。
髪の毛も、ジェンダーレスの表現の一つ。男性は短い髪型であるべき、女性が短すぎる髪はダメ などといった概念に囚われない、という特徴があります。
男性であれば目や耳などにかかる程度の長さに、女性であれば長すぎず短すぎない中間の長さに。「男性に見える」「女性っぽい」という「らしさ」にこだわらない、中間の髪型をする人が多いのです。
ジェンダーレスで最も多く見られるのが、ファッションでの表現です。男性も女性も、個性的なファッションをすることでジェンダーレスを表現するのです。ジェンダーレスの人が好むファッションを、「ジェンダーレス男子」「ジェンダーレス女子」と呼ぶことも。
ジェンダーレスファッションの特徴は、「男性でも女性でもない、中性的なファッション」というもの。LGBTの方のように、「男性に見られたい」「女性になりたい」という目的でファッションを選択するのではありません。男性・女性用という枠組みに囚われず好きなものを着こなすのが、ジェンダーレスファッションです。
このジェンダーレスファッションには、様々なブランドが影響を受けています。現在は女性でも着られる男性用のアイテムや、ユニセックスのTシャツやパーカーなどを取り扱う店舗も増えているのが特徴。
Erika Linderさんは、スウェーデン出身のジェンダーレスモデル。ジェンダーの垣根を越えたスタイルで話題となり、俳優としても活躍しています。
Erika Linderさんは女性ですが、男性モデルとしてブランドの広告に起用されたことも。また本人は、「男性になりたいわけではなく、私は最終的に女性」と提言しています。
『MISS ミス・フランスになりたい!』主演、アレクサンドル・ヴェテールにインタビュー「性別に関わらず自分自身と調和することが大切」 https://t.co/eRUS4v28oy
— Numero TOKYO | ヌメロ・トウキョウ (@NumeroTOKYO) March 15, 2021
Alexandre Wetterさんは、ジェンダーレスモデルとして活動するフランス出身の男性。大学でファインアートを学びながら、モデルとしての活動をスタートさせました。
独特のセンスを生かし、モデルだけでなく俳優としても活躍しています。2020年には、彼の人生のインスピレーションを元にした映画『MISS ミス・フランスになりたい!』に出演。男性や女性という枠に縛られない「自分らしさ」を追求しています。
りゅうちぇるさんは、2015年に「ジェンダーレス男子」として大ブレイクしたモデル。個性的なファッションやメイクが特徴で、テレビや雑誌などでも活躍しています。彼の恋愛対象は女性であり、2016年にモデルとして活躍していたぺこさんと結婚しました。
現在は子供を持つ一児のパパとして、様々な活動を行なっているりゅうちぇるさん。子供の教育にもジェンダーレスの考え方を取り入れており、性別で差別されることのない社会を目指しています。
ジェンダーレス実現への取り組みとして、学校の制服の改変が挙げられます。従来の制服は、男性はネクタイとズボン、女性はリボンとスカートといった、性別を意識してものが多くありました。しかし近年は、性別の枠組みを除去した「ジェンダーレス制服」を採用する学校が増加。
こういった制服は、ジェンダーレスの表現という面だけでなく、LGBTの方への配慮という意味も込められています。またスカートが好き、足がコンプレックスでズボンを履きたいなど、生徒一人一人の思いに寄り添うことができるのも魅力。
ジェンダーレス社会実現の取り組みとして、学校の先生へのLGBT資料の公開が挙げられます。子供たちがLGBTやジェンダーレスの考えを理解するためにも、まず先生が正しい知識を身につけなければいけません。
先生が正しい知識を持つことで、LGBTの生徒に対応できる、授業にジェンダーレスを取り入れるといった取り組みにつながります。学校教育にジェンダーレスやLGBTの恋愛観を取り入れるためにも、まずは先生の勉強が欠かせないのですね。
ジェンダーレス社会を実現するためには、正しい知識を持つことが最も大切。LGBTやジェンダーレスに対して誤った認識を持っていると、本来の目的とはかけ離れた批判が出てきてしまうもの。またジェンダーレスをカミングアウトした人が、逆に生きづらさを感じてしまう…ということも。
実際に、「ジェンダーレスが広まると恋愛観が歪む」「伝統的な行事がなくなってしまう」などの反対意見も根強く残っています。ジェンダーレスとは一体どんな考えなのか、何を目指しているのか正しく理解することが求められていますよ。
ジェンダーレス社会を実現するためには、性のあり方に対する教育の場が欠かせません。性差に対するイメージは、個人によって大きく異なるもの。社会全体で個人を尊重することの大切さ、性別による差別をなくすことの重要性を、一人一人が理解しな悪手はいけません。
そのためにはまず、性のあり方に対する学校教育が欠かせません。「男らしさや女らしさ」「一般的な恋愛観」などは、学校の先生や親などの影響で生まれるもの。性に対する認識は自由であるべき、という考えを教育に取り入れることで、ジェンダーレス社会が実現されやすくなります。
また学校教育だけでなく、社会全体でジェンダーレスを考える場を提供することも大切。大人がセクシャルマイノリティの考えを理解し、学ぶ場を作ることが求められています。次の記事では、日本と海外の性教育の違いを解説していますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
ジェンダーレス社会の実現のために、女性の労働環境改善も欠かせません。女性が社会進出しやすい環境が整いつつある一方、妊娠や子育てへの理解を得られず、不当な扱いを受ける人も多いもの。
ジェンダーレス社会実現のためには、子育ては女性がする、結婚したら女性は仕事を辞めるという考えを取り払わなくてはいけません。女性が子育てをしながら働くことへの理解や、育児休業・短時間勤務制度などの待遇改善が必要なのです。
ジェンダーレスは、まだまだ社会的に認知されておらず、誤った解釈をされることも多い考え方。ジェンダーレスの目的や意味を正しく理解して、これから社会がどうあるべきか、私たちにできることは何か、考えてみましょう。
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