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サステナブルツーリズムについて解説。持続可能な観光業を目指した背景と成功事例
皆さんは「サステナブルツーリズム」という言葉を聞いたことはありますか?近年、SDGs目標の制定やマスツーリズムの問題点を受け、広まりつつある考え方です。今回は、サステナブルツーリズムとは何か、どのような事例があるのか、詳しく解説します。
2021.04.29公開
サステナブルツーリズムとは、「持続可能な観光」を意味する言葉。観光地における文化の侵害や環境の破壊、過度な商業化を避けつつ、本来の姿を求める活動のことを指します。環境保全を重視するエコツーリズムの考え方に、文化や地域住民の生活の保護をプラスしたもの、とも言えるでしょう。
元々旅行や観光では、地域の文化や環境、自然などを切り売りするもの。しかし自然や文化を破壊し続けていては、観光地の存続が危ぶまれてしまいます。そのため、観光資源を守りながら自然体験を提供するという、サステナブルツーリズムの考えが広まったのです。
サステナブルツーリズムが提唱されるようになった背景には、マスツーリズムの広がりがあります。マスツーリズムとは、旅行や観光が幅広い層に親しまれるようになった現象のこと。元々旅行は、富裕層だけが楽しめる特別なものでした。
しかし第二次世界大戦終了後、一般市民にも旅行が浸透。その結果、環境汚染や旅行者のモラル低下などの問題が発生したのです。このままだと観光地が破壊され、旅行による恩恵を受けられなくなるということから、サステナブルツーリズムが誕生しました。
近年、サステナブルツーリズムへの関心が高まっています。SDGs目標の制定や、2017年を「開発のための持続可能な観光の国際年」に定めたことが背景。サステナブルツーリズムを進めることにより、SDGs目標が達成できるとして、活動を推奨する国や地域が増えているのです。
サステナブルツーリズムには、自然環境や文化を保護することができるというメリットがあります。これまでの観光・旅行業は商業化に注力しすぎており、観光資源をすり減らしているという問題がありました。サステナブルツーリズムを進めれば、地域本来の姿を守りつつ、観光を確立することができるのです。
また、SDGs目標に貢献できるというメリットも。持続可能な観光・旅行が確立されれば、「住み続けられる街づくりを」「陸の豊かさを守る」という目標が達成できるのです。サステナブルツーリズムを進めることは、観光資源となる地域だけでなく、国や世界にとっての利益にもなります。
Point
SDGsが定める17の目標のうち、11番目に「住み続けられる街づくりを」、15番目に「陸の豊かさも守ろう」があります。
地域住民の生活や文化が守られるのも、サステナブルツーリズムの大きなメリット。今の旅行業では観光客のニーズが最優先になっており、地域住民の暮らしが後回しになっています。使い捨てではない、持続的な観光業を確立させることができれば、居住者の生活を保護することが可能になります。
日本で取り組まれているサステナブルツーリズムの事例として、栃木県茂木市の取り組みが挙げられます。以前は葉タバコの生産地として有名でしたが、1980年代から生産が衰退。その後、過疎化や高齢化などの問題を抱える農村となりました。
しかし茂木市は、地域の豊かな自然を生かした観光業を開始。農村レストランや農園の体験ツアー、廃校を活かした体験宿泊施設など、今の環境を活かしたビジネスが広がりました。現在は「日本で一番安全・安心でおいしいまちづくり」をテーマに、数多くの観光客を呼び込ぶ名所となっています。
✔星野リゾートから絶景写真をお届け📷
— 星野リゾート Hoshino Resorts (@HoshinoResorts) February 23, 2021
「星のや富士」は豊かな森に囲まれ、四季折々の風景を楽しむことができます。キャビン(客室)は、全室・富士山と河口湖を望める設計で、絶景を眺めながら優雅な時間を過ごすことができます🗻#富士山の日https://t.co/VtHj49WJzL pic.twitter.com/tqInvX46xX
星のや富士は、富士山麓に佇んでいるリゾートホテル。こちらでは、SDGs目標を意識した様々な取り組みが行われています。例えば、歯ブラシのリサイクルやプラスチックゴミの削減など、環境維持のためのプロジェクト。樹海散策やカヌー体験などの、地形を活かした体験プログラムも豊富です。
8/23 アトラクションクルーズ
— リザーブドクルーズ (@r_cruise) August 23, 2019
【工場夜景ジャングルクルーズ】
19:00出航https://t.co/ovML3O64fk
【横浜夜景ファンタスティックカフェシップ】
21:10出航https://t.co/6kx5pvwmoU
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サステナブルツーリズムの事例として、神奈川県の工場夜景ジャングルクルーズも有名です。株式会社ケーエムシーコーポレーションが立ち上げたプロジェクトで、京浜工業地帯の夜景を船でめぐるというもの。公害や環境汚染などマイナスイメージの多い工場を、観光客を呼び込む資源として変化させたのです。
ただ単に夜景を見せるだけではなく、BGMやガイド、オリジナルカクテルなどの付加価値の付いています。常に3ヶ月先まで予約が埋まっているほど、高い注目度と人気を集めていますよ。観光客を呼び込みながらも、地域住民の生活は邪魔しない。まさに、サステナブルツーリズムを体現した事例と言えます。
群馬県みなかみ町のキャニオンズも、SDGs目標を意識した日本のサステナブルツーリズムの事例。群馬県みなかみ町は1990年代には人気を集めていた観光地でしたが、2000年代に入ると客数は半数近くまで減少。これを受け、持続可能な環境産業の育成が始まったのです。
その取り組みの一環として始まったのが、キャニオンズというラフティング事業。ラフティングの商業化をやめ、ありのままの自然を生かしたアクティビティを追求。また外国人の通訳を雇うことで、インバウンドの観光客を集めることにも成功。現在はリピーターを中心に、たくさんの申し込みを集める人気事業に発展しました。
海外のサステナブルツーリズムの事例として、タイの取り組みが挙げられます。タイでは、ウェブサイト上でサステナブルツーリズムの情報発信を実施しています。サイト内では、事業者向けにSDGs目標に向けた観光やメリットが説明されています。
またウェブサイト内では、観光客に向けた情報も発信。サステナブルツーリズムを行なっている観光地やツアーなどを掲載し、観光客にSDGs目標の意識を持たせています。国をあげて、サステナブルツーリズムを広めようとしているのです。
パラオは、国をあげてサステナブルツーリズムを行なっている地域の一つ。パラオでは、入国前の観光客に「持続可能な観光を守るための誓約書」に署名を求めています。サステナブルツーリズムに賛同した人しか、パラオに入国することはできません。
またパラオでは、環境保護に力を入れています。魚への餌やりや有害な日焼け止めの持ち込み禁止など、海洋保護を徹底した取り組みが行われていますよ。また、本来の自然を生かしたマリンアクティビティが行われているのも特徴。
ニュージーランドのホテル「Sherwood」は、サステナブルツーリズムの成功例として注目されています。Sherwoodではサステナブルツーリズムの取り組みとして、地産地消を徹底しています。レストランではニュージーランド産の食材が使われており、そのうち4割の野菜は敷地内で栽培されています。
地域の農産物を観光で使うことで、持続可能な観光を支持しているのです。また環境に配慮したアメニティの使用や、プラスチックゴミの削減など、様々な取り組みが行われているのも特徴。
サステナブルツーリズムは、SDGs目標の観点からも注目されている取り組みの一つ。今回紹介したサステナブルツーリズムの背景やメリット、日本や海外の事例などを知って、観光地の自然や文化の保護を行いましょう。
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