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人工熱帯雨林に3Dプリントオフィス!?桁外れのエコ大国ドバイの実力

セレブが集まるゴージャスな国、というイメージのドバイ。聳える摩天楼やド派手なエンターテイメントなどに注目が集まりますが、実は、ドバイは世界に先駆けるエコ大国となりつつあります。そして、なんといってもそのスケールが桁外れ。今回は知られざるドバイのサスティナブルな取り組みをご紹介しましょう。

2021.04.07公開

オイルマネーに頼らない!国際都市ドバイの成り立ち

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©ドバイ政府観光・商務局

ドバイは正式名称「ドバイ首長国」。アラブ首長国連邦を構成する首長国の1つです。中東の国といえばオイルマネーで潤っているイメージがありますが、実はドバイの主要産業は貿易、観光、金融、不動産など。意外にも、石油生産量は僅かです。

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ドバイでも1966年に石油が発見されましたが、建国の父、シェイク・ラシードは「限りある資源に未来は無い。」とし、石油に頼るのではなく、人・モノ・金が集まる国際ハブとしての国造りを目指したのです。結果、小さな漁村にすぎなかったドバイは約50年で世界に先駆ける国際都市へと華々しい成長を遂げました。

ドバイが提唱する「グリーン・エコノミー」

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華麗に発展した国際都市ドバイは、その後膨大なエネルギーを消費してきました。ところが2008年に起こった世界金融危機で大打撃を受けたことをきっかけに、一転して環境保護へと振り切ります。今後はエネルギーを消費するばかりではなく、環境に優しい経済(グリーン・エコノミー)で世界トップを目指すことを提唱しています。

そして世界一が林立するドバイらしく、その内容も桁外れ!では、具体的に現在どのような取り組みが行われているのか見てみることにしましょう。

熱帯雨林を完全再現 グリーンプラネット

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©ドバイ政府観光・商務局

グリーンプラネットとは?

砂漠に現る熱帯雨林。そう、ここグリーンプラネットは、国土のほとんどを砂漠が占めるドバイで、唯一熱帯雨林の生態系を体感できる室内ジャングルです。自然の素晴らしさ、大切さを子供たちに学んで欲しいとの願いを込めて造られました。

外気が40度を越える一方で、室内は23~26℃に保たれ、湿度は常時70%以上。水質も独自のフィルターを通して管理しており、約3000種類もの動植物が無理なく暮らせるよう工夫されています。

熱帯雨林の生態系を体感できる工夫

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©ドバイ政府観光・商務局

グリーンプラネットでは、中央に聳える世界最大の人工巨木を中心に、トップの4階から螺旋状の通路を下り見学を進めます。実際の熱帯雨林と同様、この巨木が生態系の生命維持に必要な機能を担っているのです。

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まずは4階。日光を多く取り入れ、雨を散水する役目を担う部分です。ここではコウモリや鳥類に出会うことができるでしょう。

続いて3階の中間層は、木々が多く葉を広げ、日光が差し込む明るいエリア。霊長類や爬虫類を見ることができます。

2階部分は、熱帯雨林の鬱蒼としたイメージピッタリのエリア。日光が届きにくいので湿度が高く、薄暗いのが特徴です。

更に1階部分には熱帯に流れる川を再現。アロワナや1000匹ものピラニアの群れなど珍しい魚が棲息している様子を見上げるように観察することができます。

驚くべきは、室内に柵や檻などが存在しない点。訪問者はまるで本物の森を散策するように、動植物と触れ合うことができるのです。実際の熱帯雨林では難しいナイトツアーやフォレストキャンプなど、ワクワクするようなイベントも多数。

様々な教育プログラムも

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©ドバイ政府観光・商務局

グリーンプラネットでは、ところどころにレンジャーが配置されていて、いつでも質問に応えてくれる他、子供たちが自然を学ぶため様々なプログラムも用意されています。ディスカッションやインタラクティブゲームなどを通じて、楽しみながら正しい知識や未来への責任について学ぶことができるようになっています。

世界初!3D プリント技術でオフィスを建てる

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©ドバイ政府観光・商務局

なんと、オフィスまるごと3Dプリンターで造ってしまおうという大胆なプロジェクトがドバイで実現しました。これまでも3Dプリント技術を使ったプロジェクトはいくつもありましたが、実際これほどの規模でオフィスが実用化された例は初めてといえるでしょう。

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©ドバイ政府観光・商務局

使用するプリンターは高さ6メートル、幅12メートル、長さ36メートル。建材や内装などを含め、プリントに要する期間は僅か17日。組み立てには2日しかかからなかったといいます。これにより、従来の工法と比べ人件費は50%、建築廃棄物も60%削減可能。移民系建築従事者への人権侵害や搾取なども解決でき、非常にサスティナブルな建築法だといえるでしょう。ドバイ未来財団は、今後2025年までにドバイの建物のうち25%が3Dプリントで造られると予測しています。

驚きの自給自足都市 サスティナブルシティ

中東最大のスマートコミュニティー

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ドバイ市内中心部から約30キロほどの場所に、持続可能なコミュニティーとして2017年に完成した「サスティナブルシティ」があります。サスティナブルシティでは、全てのエネルギーを太陽光発電により生み出し、電気、水、ゴミなどを再利用することで環境に配慮した街づくりを徹底。中東のスマートコミュニティー(環境配慮型都市)としては最大規模となっています。

生活全てがサスティナブルに完結

現在、サスティナブルシティには500軒もの住宅があり、約2700人が暮らしています。砂漠環境にあっても街は約1万本もの木々に囲まれ、緑に溢れています。

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驚くべきは、街中に11基あるバイオドーム。気化熱によって1年中適温に保たれたドーム内では野菜が栽培されています。ドーム内の農作物は住民であれば無料でピックアップ可能。フレッシュな野菜をいつでも無料で食べられるのです。

移動は全て電動バギーや自転車によるため、カーフリーの空気は非常にクリーン。街中には、学校、商業施設、モスク、オフィスなどが備わり、ここだけでサスティナブルな生活が完結するようになっています。

大量の水はどこから?

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©ドバイ政府観光・商務局

ドバイといえば、世界最大級の噴水ショー「ドバイ・ファウンテン」を思い描く方も多いことでしょう。また、人工湖や広大なゴルフ場のスプリンクラーなど、ドバイでは水がふんだんに使われている印象を持ちます。しかしドバイは年間降水量が100ミリにも満たない砂漠の国。いったい大量の水はどこからやってくるのでしょう。

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実は、ドバイは世界で最も水の生産量が多い国の1つ。ドバイでの水資源は自然に与えられるものではなく、作り出すものなのです。例えば、水道水は100%海水を淡水化したもの。飲用水にも海水が使われています。

ただし、海水の淡水化は環境負荷も高く問題点もあることから近年ではそれに代わる方法も研究されています。ゴルフ場や人工湖、噴水などに使われる水は生活排水を再利用したもの。ド派手な噴水ショーの水も、実はエコに配慮したものだったのですね。

必要な水は10%以下!最新農場バディア・ファーム

その他にも注目が集まるのが、最新テクノロジーを駆使した農場バディア・ファーム。ここでは、屋外ではなく屋内の縦型の棚で野菜を栽培する「垂直農法」を採用しています。土壌ではなくスポンジなどで栽培することにより水や養分の効率化などが見込まれ、省スペースで気候の影響を受けないことから生産量の最大化と安定供給を実現。

害虫の被害を受けないため農薬フリーで、更に水を再利用することによって、なんと従来型と比べ僅か10%の水しか必要としないというのだから驚きです。

厳しい気候により野菜類をほぼ海外からの輸入に頼らざるを得ないドバイにおいて、1年中質の高い野菜を自国で供給できるのは画期的。食の持続可能性を大きく広げる一歩と言えるでしょう。

まとめ

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さて、今回は砂漠のゴージャスシティ・ドバイの意外なる一面をご紹介しました。あらゆるジャンルで世界トップを走るドバイの次なる野望は、世界に先駆けるエコ大国となることです。近未来的に輝く摩天楼と対比するように、すぐ側には荒涼とした砂漠が横たわっています。

「限りある資源に未来は無い。」シェイク・ラシードの言葉には、かつて砂漠の遊牧民として過酷な環境を放浪してきた知恵と教訓が込められているのかもしれません。セレブでゴージャスな世界一の「エコ大国」。これからのドバイに注目しないではいられません。

■Writer's Profile

藤井麻未

元海外旅行添乗員。1児の母時々旅ライター。LINEトラベルjp、ANA、HIS等旅系サイト、25ans、oggi等女性誌、ビジネス誌などに寄稿。

Instagram :@mamfuj
ブログ:元添乗員の国外逃亡旅行記

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