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元添乗員が選ぶ 真っ先に行きたい海外 ~世界で1番美しいカフェ編~
海外旅行の楽しみといえば、カフェ巡りを挙げる方も多いでしょう。日本にも素敵なカフェは沢山ありますが、海外のカフェは歴史や立地、装飾への拘りなどがケタ違い。独自の魅力に溢れています。真っ先に行きたい海外シリーズ、今回はどれも世界一といって過言は無い、わざわざ行ってみたくなるような各国の珍しくて美しいカフェたちをご紹介しましょう。
2021.04.21公開
アガサ・クリスティーの名作ミステリー「オリエント急行の殺人」。2017年に映画化された「オリエント急行殺人事件」をご覧になった方も多いのでは。その中で重要な役割を果たしているのが、1883年~2009年の間、パリ・イスタンブール間をはじめ東西ヨーロッパを運行していた伝説の豪華夜行列車「オリエント急行」です。
「走る高級ホテル」とも呼ばれたその豪華さは、各国の要人や著名人もこぞって利用したことからも伺えます。しかしながら、現在は定期便が廃止され、往時をしのぶ観光列車として一部の路線で特別運行がなされているのみです。
さて、そんな幻の豪華列車に乗車した気分を味わえるカフェが、クロアチアの首都ザグレブにあります。実は、ザグレブはかつてオリエント急行の停車駅があった都市。映画でも、冒頭のイスタンブール駅構内のシーンでザグレブ停車を知らせるアナウンスが流れます。
ザグレブの中心部、賑やかな通りから少しだけ脇に入るとお目当てのカフェ「Orient Express」があります。思ったよりも小さな間口はちょうど列車の扉サイズ。まるで優雅な列車の旅に出掛ける気分で、重厚な扉を開きましょう。
内部は聞きしに勝るレトロで煌びやかな内装。まずはカウンター、その脇にはテーブル席がありますが、手荷物置き、窓枠、背もたれの取手など、そのどれもが列車の座席そのものです。それもそのはず、これらはかつて実際に走っていたオリエント急行の客車から移設したものなのです。
更に奥にはボックス席が。古びた木造の扉や天井はピカピカに磨き上げられ、革張りの椅子も丁寧に手入れされています。その美しさは時を経た今でも衰えをみせません。当時多くのセレブ達を乗せた華麗な列車の歴史と面影を、ここザグレブで体感してみてはいかがでしょう。
イギリスの中でも最も独特の文化を持つ地方、ウェールズ。湖や小川、丘陵地帯など豊かな自然に恵まれているのも魅力です。そんなウェールズ北部の小さな街スランウストに、一度見たら忘れられない美しいカフェ(ティーハウス)があります。
「Tu Hwnt i'r Bont(ティ・フンド・イル・ボント)」という変わった名前は、ウェールズ語で「橋の向こうのティーハウス」という意味。その名の通り、古びた石橋の向こう側に、思わず微笑んでしまうほど可愛らしく素敵なフォルムのティーハウスが佇んでいます。建物を包み込むように絡んだ蔦は季節ごとに色を変え、まるでティーハウス自体が生きているかのよう。
ここでは素朴な片田舎のレシピで焼いたスコーンにバターやジャム、クリーム、バラブリスという伝統のパンなどをいただけます。もちろんブルーウィローの茶器で供される絶品の紅茶は忘れずに。
アジアを代表する高級ホテルといえば「マンダリン・オリエンタル」です。マンダリン・オリエンタルの醍醐味は、洗練されたラグジュアリー感の中に、各国の特色を活かした優雅な内装を取り入れているというところ。19世紀にタイ初の5つ星ホテルとして誕生した「マンダリン・オリエンタル・バンコク」もその1つです。
ゆったりと流れるチャオプラヤ川の畔にひときわ目を引く白亜の建物。タイ・バンコクの中心部にありながらその喧騒を感じさせない優美な隠れ家は、緑に囲まれそこだけ別の時が流れているようです。内部に入ると開放感のある高い天井、オリエンタルな雰囲気の調度品が見事にマッチしたラグジュアリーな空間が広がっています。
そして、ホテル1階にあるのがお目当ての「オーサーズ・ラウンジ」。明るい自然光が差し込み、生花や植物がふんだんにあしらわれた夢のように美しい空間でアフタヌーンティーをいただくことができます。また、各国の著名な文筆家(オーサー)たちがこぞってこのホテルを定宿としたという逸話の通り、ここを訪れた彼らのポートレートが飾られています。
20世紀初頭の重厚な内装は白とグリーンを基調とした優美な印象。籐の家具やタイシルクのファブリックは19世紀当時のままのスタイルでクラシックさが漂います。
アフタヌーンティーのメニューは3段トレイのウェスタンタイプの他、タイ伝統のベンジャロン焼陶磁器に入ったオリエンタルタイプも。タイをはじめアジア各国のテイストを取り入れたセイボリー、タイの伝統菓子を食べやすくアレンジしたスイーツ類、マンゴーなどを練り込んだスコーンなどからなるオリジナルメニューは、ここでしか味わえません。
コーヒーといえば、なんとなくヨーロッパをイメージする方が多いのでないでしょうか。しかし、実はコーヒー文化はアラブ諸国が発祥。中でもトルコはコーヒー大国としてヨーロッパに先んじ、現地で飲まれている「トルココーヒー」はユネスコ無形文化遺産にも登録されているのです。トルコを訪れたなら、ぜひ現地のカフェを訪れてみましょう。
ここイスタンブールの「Asiyan Kitap Kahve(アシアン・キタップ・カフヴェ)」は、ボスポラス海峡を挟んで東のアジア側ユスキュダルという街にある小さなカフェです。坂がちの小道を上がると、花が咲き乱れる木々の間に瀟洒な別荘のような建物が。
内部は幾何学模様や植物をモチーフとしたイスラム風の装飾、凝った木製の調度品やアラビックなデザインのランプ、シャンデリアなどに囲まれ、イスラム美術の細かさと美しさを存分に味わうことができます。
トレイやカップにもトルコらしいデザインがあしらわれ、細部までその美しさに見とれてしまいます。細かく挽いたコーヒーの粉を砂糖と一緒に煮出し、その上澄みを飲むというトルココーヒー。ぜひ本場で味わってみてくださいね。
17世紀になると、アラブ諸国からヨーロッパにコーヒーが伝わります。中でもオーストリアのウィーンでは、オスマントルコの包囲によってもたらされたコーヒーが爆発的に根付きました。現在でもウィーンの街には様々なカフェが溢れ、独特のカフェ文化が魅力の1つとなっています。
さすがウィーンのカフェはどれも甲乙つけ難く、美術史美術館内のカフェなども有名ですが、今回筆者が注目したのは「Gerstner K.u.K Hofzuckerbäcker(ゲルストナー ケーウントカー ホーフツッカーベッカー)」。ゲルストナーといえば、ハプスブルク皇妃エリザベート・シシィがひいきにしていた王室御用達の菓子店としても有名です。
オペラ座横のこちらの店舗では、モダンでフォトジェニックな雰囲気とクラシックな宮廷風の雰囲気とを両方味わうことができます。デコラティブな螺旋階段で2階へ上がると、そこは居心地の良いソファー席が並ぶカフェ・バーが。
クラシックで落ち着いた調度品を使いつつも、色使いやディテールにどこかモダンさを感じます。
更に上にはカフェ・レストランがあります。こちらは一転してノーブルな壁紙にゴールドの装飾があしらわれ、瀟洒なシャンデリアが映える正統派宮廷風。部屋によってテーマカラーが違うので何度訪れても楽しめます。オーストリア伝統料理も味わえるのでオペラ鑑賞ついでに食事をするにもピッタリ。
いずれにしても、さすがカフェ大国ウィーンのプライドを感じさせる、文句なしに美しい空間です。ウィーンではカフェで長居するのも文化の1つ。是非ゆっくりとその世界を味わってみてくださいね。
さて、世界の美しいカフェはいかがだったでしょうか。各国どれも独特の魅力がある唯一無二のオリジナルカフェです。コーヒーや紅茶の美味しさはもとより、美しい空間に身を置き、そのカフェにまつわるストーリーや歴史に思いを馳せてみるとまた違った楽しみ方ができるかもしれません。今度旅に出るときは、ぜひこれらのカフェを目的に加えてみてくださいね。
元海外旅行添乗員。1児の母時々旅ライター。LINEトラベルjp、ANA、HIS等旅系サイト、25ans、oggi等女性誌、ビジネス誌などに寄稿。
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