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LGBTとSDGsの目標について。明記されない理由と実際の取り組みに関して
SDGsの目標にジェンダー平等が掲げられていますが、LGBTについての言及がないことをご存知ですか?LGBTとSDGsの関係と、明記されない理由についてご解説。実勢の取り組み例も見ながら、LGBTとSDGsに対する考えを深めていきましょう。
2021.06.11公開
持続可能な開発目標であるSDGsには、LGBTという表現はどこにも明記されていません。LGBTとは、セクシュアル・マイノリティの総称のこと。レズビアン(Lesbian)・ゲイ(Gay)・バイセクシュアル(Bisexual)・トランスジェンダー(Transgender)の頭文字から取られています。
SDGsは、持続可能でより良い世界を目指すために、国連サミットで採択された目標。2030年をゴールとし、社会全体で取り組むべきものとされています。17の目標と169のターゲットで構成されていて、貧困・教育・平等・経済・気候変動といった社会的な問題を取り上げていることが特徴です。
セクシュアル・マイノリティの総称であるLGBTには、少数派であるがゆえに世界各地で差別や迫害を受けやすいという問題が。SDGsの目標の中でも扱われる、「平等」に関わる問題になります。SDGsにLGBTは明記されていませんが、決して無関係ではありません。
SDGsの中で、LGBTに深く関わるのは5番目の目標です。「ジェンダー平等を実現しよう」と銘打たれた目標5は、文字通りジェンダーに関する差別の撤廃や、暴力の排除を目指したものになります。
また、目標10「人や国の不平等をなくそう」や、目標16「平和と公正をすべての人に」も該当。目標5・10・16のいずれのターゲットにも、ゲイやレズビアン、トランスジェンダーといった表現は明記されていません。しかし、LGBTが例外となることはありません。
LGBTが、目標5などのターゲットの例外とならない根拠は、SDGsの理念にあります。LGBTに関する表現は明記されていなくても、「誰一人取り残さない」というテーマは記されているためです。
そのため、日本を含め、世界の多くの国でLGBTの人々も意識した取り組みが行われています。理解を深め、差別や迫害をなくす努力を続けることは大切です。
SDGsの目標にLGBTが明記されていないのは、各国の共通とするには難しいことが理由。多様なセクシュアリティに対する認識は、国ごとに違いがあります。同性間の性行為を例に挙げても、結婚まで認める国から、厳罰対象とする国まで様々。
SDGsは、国連での議論で採択されているため、各国の合意が得られるラインに留める必要があったのだと考えられています。レズビアンやゲイに加えて、バイセクシュアルやトランスジェンダーがタブーとされる場合があるため、各国の共通目標として明記されていないのです。
LGBTが明記されない理由には、ジェンダーが一括でまとめられないことも挙げられます。セクシュアル・マイノリティの総称がLGBTとなっていますが、必ずしもレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの4タイプに、綺麗に分類できるものではないためです。
人の性自認や性的指向は、実に様々。性自認や性的指向が明確ではない「クエスチョニング」、性自認が中性または性別を決めたくない「Xジェンダー」、他人に恋愛感情や性的欲求を抱かない「アセクシュアル」など細分化されます。
そのため、LGBTにすべての性自認や性的指向を表す意味を込めるのは不可能。あえて頭文字ですべてを表記しようとしたら、円周率のようなものになるという意見もあるほどです。多様であるがために、LGBTというワードでは明記できないという背景が見られます。
LGBTに関する学校の取り組み例には、教育を含めて様々なものが見られます。例えば、日本の学校教育では、学習指導要領にLGBTは盛り込まれていません。しかし、性の多様性に触れることは必要と、2021年からの中学教科書で大幅に記述を増やすことを文部科学省が発表しています。
また、LGBT教育を進めるために、教職員の向けの手引も作成されています。さらに、男女区別のない制服を取り入れる学校や、ジェンダーフリーのトイレを設置する学校なども見られるように。日本ではまだ少数派ですが、SDGsの目標を意識した教育や取り組みは、今後は増えていくと考えられています。
日本の企業でも、LGBTに関する取り組み例が見られます。例えば、採用活動の際に性別記入を必須としないことや、LGBT研修の実施で社員全体の理解を深める取り組みが。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーを始めとした、多様なセクシュアリティの人が働きやすい風土づくりが意識されるように。
企業によっては、事実婚や同性パートナーがいる社員が、配偶者に関する制度を利用可能としているところも。日本企業全体を見ると、まだまだ発展途上ですが、LGBTに関する制度に対しての意識は高まりつつあります。
社会全体の取り組みでも、SDGsを意識したものが見られます。例えば、SDGsが採択された2015年には、東京の渋谷区と世田谷区で「パートナーシップ制度」がスタート。同性カップルを「結婚に相当する関係」として認める証明書が発行されるようになりました。
パートナーシップ制度で証明されることによって、一部の生命保険や携帯電話の家族割などが利用可能に。日本ではまだ社会的に認められていない同性婚ですが、パートナーシップ制度が承認のきっかけになると考えられています。
2015年に制度を導入自治体はわずか2つでしたが、2020年には全国64自治体に増加。導入を予定している自治体も増えてきています。
SDGsの理念は、誰一人取り残さずに持続可能な世界を実現すること。目標に明記されていなくても、LGBTを始めとしたセクシュアル・マイノリティの人たちが例外となるはずがありません。
SDGsの目標を意識して、LGBTに対する理解を深めることは、差別や迫害を世界から撤廃するための第一歩。皆でより良い世界を目指して進みましょう。
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