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フードバンクとは?食品ロス、貧困問題解決に繋がる活動内容を分かりやすく解説
皆さんは、「フードバンク」という言葉や取り組みについてご存知ですか?近年、食品ロス削減や貧困問題解決の観点から、フードバンクの活動が注目されているのです。今回は、フードバンクの意味や活動団体、支援内容について詳しくご紹介。
2021.05.10公開
フードバンクとは、様々な理由で廃棄されてしまう食品を、困窮世帯や施設、団体などに提供する活動を意味します。安全に食べられる食品が廃棄されている、という現状を改善するために始まりました。
フードバンクでは、「企業や個人から寄贈された食品を、様々な利用者のもとに届ける」という流れを提供しています。これが銀行の仕組みに似ていることから、フードバンク(食品の銀行」と呼ばれるようになったのです。
フードバンクの活動は、1967年にジョン・ヴァン・ヘンゲルによって開始されました。ボランティアをしていた彼は、スーパーで食品が大量に廃棄されていることを知ります。ジョンは廃棄食品の寄付を交渉すると共に、食料を備蓄する倉庫を借りました。
こうして1967年にアメリカで、世界初のフードバンクが誕生。ここから急速にフードバンクは広まり、現在アメリカでは200以上の団体が活動しています。アメリカだけでなくフランスやイギリス、カナダ、オーストラリアなど、世界各国で様々な支援が行われているのも特徴。
日本でフードバンクの活動が始まったのは、2000年以降。しかし活動の意味や理由がなかなか浸透せず、団体数は伸び悩みました。2020年になった今でも、まだまだ認知度が低いのが現状です。
フードバンクで取り扱われる食材には、いくつかの基準が設けられています。一般的に賞味期限まで1ヶ月以上あるものや未開封の食材、外装が破損していない食品が対象。具体的にはレトルト食品やお米、ふりかけ、調味料などが当てはまります。
一方、賞味期限が切れている食材や開封されているもの、野菜や生肉などの生鮮食品は対象外となります。その他、活動団体によって取り扱いの基準は異なりますので、事前の確認が必要です。
フードバンク 対象食品の例
フードバンク 対象外食品の例
フードバンクが行われている理由とは、食品ロスの削減です。日本では年間1700万トンもの廃棄物が排出されています。この中で、本来食べられるはずの「食品ロス」の量は、年間500〜800万トンに及ぶのだとか。この食品ロス削減に関する施策の一つとして、フードバンクの活動が注目されているのです。
食品ロスの削減は、SDGs目標の12番目である「つくる責任 つかう責任」に関係します。2030年までに小売・消費における一人当たりの食品廃棄量を半減させ、食料の損失を減少させることが目的。フードロス活動を進めることで、SDGs目標達成にも近づけるのです。
Point
「持続可能な開発目標」のこと。17つの目標を設定し、地球に住む全ての人を不幸にしないことを目的にしています。
下記の記事では日本の食品ロスの実態を解説しています。食品ロスの状況が海外とどのように差があるのか、今後どのような取り組みが必要なのかを一緒に考えてみませんか。関心のある方は是非ご覧になってみてください。
貧困状態の改善に期待できるというのも、フードロス活動が推進されている理由の一つ。貧困問題というと、発展途上国を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし厚生労働省の調査によると、日本の子供の相対貧困率は約14%に上ると判明。これは7人に1人が貧困状態になっていることを示しています。
食べ物に困っているというと私たちは先ず発展途上国の子ども達を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、厚生労働省が行った「平成28年国民生活基礎調査」により、平成27年時点における日本の子どもの相対的貧困率は13.9%に上ることが明らかになりました。
これは、日本の子どものおよそ7人に1人が貧困状態に置かれていることを示しています。近年、こういった貧困に苦しむ子供を支援する団体が増えています。フードバンクの活動によって困窮世帯や施設に食品が行き渡れば、貧困状態が改善できると期待されています。
フードバンクのメリットとして、廃棄コストを削減できることが挙げられます。食品ロスが発生すると、食材を捨てる際に費用が発生します。廃棄量が多くなればなるほどコストも増え、利益が減ってしまうのが現状。
このような場合に、食べられる食品をフードバンク団体に寄付すれば、廃棄コストをゼロにできるのです。また、食品を捨てる際に生まれるCO2を減らすことができるというメリットも。支援される側だけでなく、企業や環境にとっても意味のある活動と言えます。
フードバンクの活動が広まることで、地域が活性化するというメリットもあります。フードバンクに携わる人が増えれば、地域全体で生活困窮者や高齢者を支えることが可能に。
行政と民間の連携が強まれば、「生活保護に頼らないセーフティーネット」が誕生する可能性も。フードバンクのシステムが広がれば、地域全体が豊かに、活発になるのです。
フードバンクによる食料支援が広まれば、財政負担が軽減されるというメリットも生まれます。フードバンク団体によって「食の安全」が保障されれば、行政による対策は必要なくなります。
食の支援に関する予算が削減された結果、財源を生活困窮者や生活保護受給者の就労支援に回すことが可能に。この流れが確立されることは、国全体が潤うことを意味します。
フードバンクを行なっている団体として、フードバンク山梨が挙げられます。日本の中でもかなり大きい支援団体の一つで、様々な活動を行なっているのが特徴。年間7000万円の運営資金の半分を、行政からの補助金や助成金で賄っています。
フードバンク山梨では食品の提供以外にも、生活困窮者の自立支援や実態調査、子供の学習支援などを行なっています。様々な支援活動を、多方面に渡って行なっている団体なのです。
セカンドハーベスト・ジャパンとは、日本で初めてフードバンクを開始した団体。2002年にフードバンク活動を開始し、日本に活動を広めてきました。農林水産省から委託を受け、フードバンクの運営マニュアルを作成したのも特徴。
日本で最大級のフードバンク運営団体として、安心・安全な食品を各所に届けています。施設に食品を運ぶだけでなく、個人支援や炊き出し、無料スーパーなど、様々な形態で支援活動を行なっているのも特徴。更に、食品の寄付不足に苦しむフードバンク団体に、食料の寄贈を行なっています。
全国フードバンク推進協議会とは、フードバンクを行う団体を支える組織のこと。フードバンク団体が抱える課題やデメリットを共有し、より良い支援方法や食品提供を目指しています。
日本全国に加盟団体があり、フードバンクに関する様々な相談を受け付けているのも特徴。運営や資金に関する悩みや、これからフードバンクを始めたいという人からの相談を、幅広く受け付けています。
フードバンクの利用方法として、個別に食品を受け取るというものが挙げられます。ひとり親世帯や生活困窮者を対象に、安全な食品を運ぶ活動を行なっているフードバンク団体があります。
こういった団体に申し込むことで、必要な食品を受け取ることができるのです。食品を受け取ったお礼として、社会貢献活動を推進しているフードバンクも。
フードバンク団体が行なっているイベントに参加する方法でも、食品を受け取ることが可能。近年食品支援を広げるために、食料を無償で提供するというイベントが行われています。例えば滋賀県の「フードバンクひこね」は、6月に食品を無料で配布。
同じ時期に「フードバンクひらつか」が、世帯あたりに米を3キロ配るというイベントを開催。自治体と提携して、イベントを行なっている団体が増えています。安全な食品を受け取りたい方は、地域や自治体の広報やSNSをチェックしてみて。
子ども食堂を利用することで、安全に食品を受け取ることができます。子ども食堂とは、貧困家庭の子供に食事を提供する場を設けるための施設。
子供だけでなく、貧困に苦しむ大人も気軽に使うことができます。子ども食堂で作られる料理には、フードバンクが無償で提供した食品が使われているのが特徴。間接的にフードバンクを利用することができます。
フードバンクによって開催されている炊き出しに参加する、という方法もおすすめ。調理された状態で食品が配られるため、忙しい方や調理器具がない方でも使うことができます。
ただし、炊き出しには多くの資金や準備、ボランティアの人材が必要になります。こういった理由から、炊き出しが行われている数は決して多くはありません。炊き出しを利用したいのならば、近くで行われているか事前に情報を集めることが大切。
フードバンクの活動は、食品ロスの削減や貧困改善など、様々な理由のもとで行われています。食品を受け取る側だけでなく、提供する企業や行政にも様々なメリットがあるのも特徴。フードバンクの意味とは何か、どんな活動が行われているのか理解して、困窮世帯や施設への支援について考えてみて。
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