10月11日は「国際ガールズ・デー」。国際NGOプラン・インターナショナルの働きかけにより国連に制定された「女の子の権利」や「女の子のエンパワーメント」の促進を、広く国際社会に呼びかける日です。
2021年は、この活動に賛同する企業10社が「国際ガールズ・デーPLUS」として集結し、フォトグラファーのAKANE(アカネ)さん制作による共通アイコンを掲載したフライヤーを各所で配布すると同時に、各企業のオリジナリティあふれる企画で世界の女の子たちを応援します。
今回は、共通アイコンを製作されたAKANEさんにお話を伺いました。日本、香港、中国・深セン、そしてアメリカでの暮らしをバックグラウンドに持つ彼女の、独特な感性を形作るものとは。”常識に囚われない”クリエイティブに挑戦し続ける彼女の魅力に迫ります。
クリエイティブの道に進んだきっかけは?
幼いころから「手を動かしてつくる」ことが好きでした。ドールハウスは画用紙を使って自分で作ったり、葉っぱや石など手が届く範囲の材料を活かして自分で遊べるものを作ってみたり。
中学・高校では、美術のクラスで空き缶を素材にして彫刻をしたことも印象に残っています。これまで興味を持ってやってきたことが自然と美術の道へと繋がっていたという感じです。
その中でも、写真の道に進んだきっかけは?
高校の時、星野道夫さん(写真家)の作品に出会ったことですかね。最初油絵だと思っていたら、よく見ると写真だったんです。アザラシの写真だったのですが、毛の一本一本がすごく柔らかく写っていて。それまで写真は「事実を記録するもの」という認識だったのですが、その一枚に出会ったことで、写真の表現ってこんなにも奥深いんだと衝撃を受けた記憶があります。
そこから自然風景の写真に興味を持ち、さまざまな作品を見ていくうちに、写真は「どこでもドア」みたいな存在だなと思うようになりました。写真って見るだけでそこに行った気分になれるし、その場の雰囲気を含めた空気感ごと写しているということに気が付いて。そこから、どんどん写真の世界にのめり込んでいきました。
ご自身の作品をどのように届けたいですか?
見る人にわくわくしてほしいという思いはベースとしてあるんですが、加えて視野を狭めてほしくないというメッセージを伝えたいですね。過去にいろいろな国に住んでみて、常識だと思っていたことが他の場所では通じないことがあるなど世界の広さを身をもって実感しました。写真を通してそんな常識を壊していきたいという想いがあります。
例えば、女性は家事担当という「当たり前」を女性差別や偏見問題としてシリアスに伝えるだけではなく、見る側に響くようポップな要素も加えて伝えていきたいと思っています。意識を変えていく力があるのなら、明るく前向きに未来を変えていきたいですよね。
実は、写真の道を目指す前、貧困地域や自然保護などのボランティア活動にも興味を持っていたことがあったんです。今は、写真という媒体を通して人の行動や気持ちを後押しできるという点で、自分の写真が社会的なメッセージの発信にもなっていればと思います。
香港、深セン、アメリカ、日本での在住経験があるAKANEさん。その中で特に作品に影響を与えた原体験はありますか?
明確にこれ、というのはなく、かけらかけらのパーツが集合体になっていると思います。例えば、香港で目にした夜景は、彩度やコントラストの高い作品に影響していると思いますし、アメリカの中古用品店で古いグッズが並んでいた光景なんかもそうです。様々な地域に住んでいた時間が凝縮されて、時代と文化がごちゃまぜになった常識に囚われない表現に繋がっているのかもしれません。
foooodの作品では食べ物のモチーフを用いていることが多いように感じました。食べ物の見え方に特徴はありますか?
スーパーの野菜コーナーに行くと、私は「おいしそう」よりも「おもしろそう」といった視点で眺めていることが多いです。野菜を野菜ではなく、素材の一部として見ているというか。
例えば人参を見て、これを脚のパーツにしたらどうなるだろうと考えたり、「旬の野菜」と書かれていたら、どうして旬なんだろうとイメージしたりして、そこから想像を膨らませています。規格外の形をした野菜にも好奇心が沸きますね。野菜は動きがないものだからこそ、作品にしていく過程で生命力を与えられるのではないかと思っています。
foooodやstill-lifeの作品とstreeeetの作品は印象が異なりますが、ご自身の中で表現したいものに違いはありますか?
foooodやstill-lifeの作品はあらかじめ構図・配色を決めてから撮影に入るので、コンセプチュアルな作品に仕上がっていると思います。
streeeetの写真はフィルムカメラを使用したスナップ写真が多く、感情を記録したい時に絵日記を書くような感覚で撮っています。フィルムカメラを握って撮っている瞬間、自分の感情を風景に照らし合わせている気持ちなんです。例えば、気分が落ちていた時の写真は影の要素が強く出ていたり。そういった撮り方はマインドをリフレッシュする意味もあるので、自分のために撮るという要素も強いですね。
「国際ガールズデー」のアイコンに込めた想いについて教えてください。
子どもの頃、いわゆる「女の子らしい」とされているおもちゃではなく、「男の子らしい」遊びに興味を持っていたんです。それに対して周りから「女の子はピンクやキラキラしたものが好きでしょ」と決めつけられたり、そういった性別による仕分けが小さい頃から嫌だなと感じていました。
そんな経験がある上で、発展途上国の女の子たちに目を向けた時、そういった「女の子らしい生き方」みたいなものをきっと私達よりも強いられているだろうに、すごくたくましく生きている。その姿を表すにはどんな風にしたらいいだろうと考えた時に蝶が思い浮かんだんです。蝶って、毛虫からサナギ、そして美しい蝶になって羽ばたいていくじゃないですか。その変化していく様子に、女の子が困難に立ち向かう姿を重ねました。
そこに私の原点であるものづくりの要素を加えて、羽のパーツを歯車や定規などを使って表現しています。そうして羽ばたいていった蝶たちが再び舞い戻ってきて、次のサナギたちの道しるべになっていけばという想いを込めています。明るい未来を目指してほしいという気持ちで制作しました。
今後、AKANEさんがクリエイティブ活動を通して表現していきたいものは?
今回、「国際ガールズデー」という女性のエンパワメントに関するテーマをベースにした作品作りに携わったように、ビジュアルクリエイターとして社会的な面を含んだ表現も凝縮するタイミングに来ているのかなと。
これからの時代は、ただ写真を撮るだけではクリエイターとして物足りなくなってしまうと考えていて、そこから一歩先に踏み出して自分の信念やメッセージ、「やりたい」という熱意をもっと押し出して、社会に風を巻き起こしていければと思っています。わたしも蝶のようにいろんな世界に羽ばたいていきます!
(C)Machiya Sato / amana photography
「国際ガールズ・デー」の協賛企業の1つである、ISETAN SALONE(イセタンサローネ)では、10/6(水)〜10/12(火)の期間中、AKANEさんの作品の展示イベントを開催中。
今回の「国際ガールズ・デー」のアイコンはもちろん、様々な作品をご覧いただけます。AKANEさんの色鮮やかでドリーミーな作品を、実際にご覧いただけるスペシャルな機会になっています。
さらに、1Fプロモーションスペースにて、子供服「マメール」のPOP UP、デリケートゾーンケアブランド「I'm La Floria」の商品展示・販売、サンプル配布も実施しておりますので、こちらもぜひご覧ください。
(C)Machiya Sato / amana photography
展示会場:東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン・ガレリア1Fイセタンサローネ アートウォール
期間:10/6(水)〜10/12(火)
フォトグラファー。
1994年、長野県生まれ。小学校から高校までを香港と深セン・中国で過ごす。アメリカ、コロンバス・オハイオ州の Columbus College of Art & Design 卒業後、株式会社ヒュー(現アマナフォトグラフィ)に入社。2021年にグループ展”amana’s fresh creators exhibition LEAP”に出展。自身のサードカルチャーキッドとしての経験を生かし、文化と歴史が溢れるありとあらゆる物をミックスした、エキセントリックでドリーミーな世界観を得意とする。
関西在住の大学生。「わたしの性は、じぶんゴト。」というテーマでフェムテックグッズを紹介するフェムテクラブ(Instagram @femteclub)を運営。大学ではジェンダーについて学ぶ傍ら、台湾好きが高じて中国語学習に奮闘中。
my-museでは「国際ガールズ・デー」に賛同し、女の子たちをエンパワメントする記事の数々を発信していきます。特集ページはこちらから
最近の記事
Recent articles
「一人ひとりが成長ではなく、“成熟”していく世界へ」食べる瞑想を通して伝えたい、本質的な豊かさとは/Zen Eating代表・Momoeさん
禅や食べる瞑想「Zen Eating」を伝えながら、国内外で活動しているZen Eating代表・Momoeさんにインタビュー。食べる瞑想「Zen Eating」とは、今日からできる、幸せな食事の方法です。そして、私たちがあらゆるものとつながっているということを気づかせてくれます。Momoeさんが、Zen Eatingを通して実現したい世界とは? そして、今後の世界で問われる、本質的なWell-beingとは。
2024.12.01
Interview
Wellness
♯グッドバイブスウーマンvol.6<鈴木優菜さん/衣装・刺繍作家>
#グッドバイブスウーマン。その方の信念や生き方、在り方がわかるような、「10の質問」をお届けします。本連載は、グッドバイブスな友人・知人をご紹介していくリレー形式。第六回目にご登場いただくのは、衣装・刺繍作家の鈴木優菜さん。
2024.11.22
Interview
♯グッドバイブスウーマンvol.5<山田祐実さん/フリーランスカメラマン>
#グッドバイブスウーマン。その方の信念や生き方、在り方がわかるような、「10の質問」をお届けします。本連載は、グッドバイブスな友人・知人をご紹介していくリレー形式。第五回目にご登場いただくのは、フリーランスカメラマンの山田祐実さん。
2024.11.12
Interview
私のバイブル vol.5/ファッション学園長・びばり〜えりさん
自身が持つ才能を活かし、クリエイティブな生き方をしている素敵な人に、ミューズたちの指針や道標となり、My Museの在り方を体現するような映画や本、アートをご推薦いただく「私のバイブル」。
2024.11.09
Culture
「Plantfulな暮らし、始めませんか?」持続可能な社会の在り方を提案するイベントを11月17日に開催!
人々のウェルネスと地球保全のために、プラントベースの食習慣を日本に広める活動を行う、イタリア在住のヴェルヌ華子氏の来日に合わせて、環境活動家である深本南氏を招いたイベント「Plantful Inspirations 2024」を代官山のForestgate Daikanyama TENOHA棟 CIRTY CAFEにて開催。
2024.11.05
Wellness