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ジェンダーギャップの不均衡の軽減を。個室トイレで生理用ナプキンを無料で提供するサービス「OiTr(オイテル)」

ジェンダーギャップの不均衡の軽減を。個室トイレで生理用ナプキンを無料で提供するサービス「OiTr(オイテル)」

「トイレにトイレットペーパーは常備されているのに、なぜ生理用品は常備されていないのか?」そんな今までのあたりまえに疑問を持ち、心身ともに不調が起こりやすい生理期間に少しでも負担を減らしたいという思いから開発された「OiTr(オイテル)」。 今回は、「OiTr」サービスを運営するオイテル株式会社 専務取締役COOの飯崎さんに、サービス開発の背景や、ナプキンを無料で提供するための仕組みや工夫について伺いました。

2022.03.12

生理に伴う心や身体の負担を軽減するために。「OiTr」サービスができるまで

OiTr

OiTrが開発された経緯を教えてください

代表の小村と仕事を通じて知り合い、お互いに「何か意義のあることをしたい」という考えに共鳴し、「一緒に実現できたらいいね」と話したことがきっかけでした。その中でたどり着いたのが、社会課題です。  

社会課題を解決するための社会貢献活動というと、非営利団体やNPO・NGO法人、またはボランティアや寄付など、素晴らしい活動がたくさんあります。ただ、その活動が日本全体に広がったり、インフラが整備されるまで確固たるものになるかというと、それは難しいのではと考えました。

サスティナブルな社会を実現するためには、「社会課題を直接ビジネスで解決する」ことが必要だと考え、新しい事業をスタートすることにしました。    

「社会課題をビジネスで解決する」というテーマのもと、実際に社会にはどんな課題があるのかを掘り下げて調べました。その中で非常に気になったのが、ジェンダーギャップです。  

かつては「人生のゴール=結婚」といった考え方を持っている方も多くいらっしゃる時代がありましたが、日本でも女性の社会進出が進み、自分の人生を自由に選択できる時代になったように感じます。

しかし、日本のジェンダーギャップ指数は156ヵ国中120位という低さ(2021年3月)。女性たちが生きやすい社会になったと思いながらも、ジェンダーギャップが生じていることについて掘り下げると、女性特有の健康課題による負担が大きいことを知り、また思うように改善されていないことに気づきました。

まだまだ男女平等とは言い難い日本において、男性である私たちも水面下にある課題についてきちんと肌で感じ取らなければと思い、女性特有の健康課題について調べ始めました。      

そんな中、2019年に女性の健康課題をテクノロジーで解決する「フェムテック」という言葉に出会いました。フェムテックの中にも「月経」や「不妊・妊よう性」などさまざまな分野がありますが、これらは当事者である女性たちが今までの経験や課題を解決したいという思いから起業してスタートした市場だと知りました。

非当事者である私たちは、当事者と同じように肌で感じ取ることは正直難しかったです。私たちにも何かできることはないだろうかとずっと模索していたら、ネット上である女性の声を見つけました。「トイレにトイレットペーパーは常備されているのに、なぜ生理用品は常備されていないの?」    

この問いかけを目にしたとき、「確かに!」と思ったのです。生理用品はトイレットペーパー同様に日常的に必要不可欠なサニタリー用品でありながら、個室トイレには設置されていない不条理なことに気づかされました。  

とてもシンプルですが、身体的男性としてなかなか女性特有の悩みを肌で感じられなくても、この課題を解決できたら女性たちが抱えている課題に寄り添えるかもしれないと思いました。それから、「個室トイレに生理用品がトイレットペーパー同様に行き届く社会をつくりたい」という思いで実際に企画を考え始めました。  

「生理の貧困」ではなく、「ジェンダーギャップを解決したい」という思いからスタートされたんですね。

そうです。もともとは「ジェンダーギャップという不均衡を軽減したい」という思いから始まりました。それを実現する1つの手段として生理に伴う様々な負担を軽減することが、女性たちのQOLを向上させジェンダーギャップの解消につながるのでは、と思ったんです。  

「生理の貧困」はOiTrの実証テストの最中に話題になったので、OiTrが無料で利用できることから、生理の貧困のために開発されたと思っている方もいらっしゃると思います。

私たちのサービスは生理の貧困の一助にもなるかと思いますが、日本は「生理の貧困」=「金銭的貧困」に結び付けられることも多く、とても狭義だと感じます。私たちは、お金がある・ないに関わらず、女性たちが生きていく中での生理に関わる、心や身体の負担を軽減したいという思いでサービスを考えました。    

ご自身は生理の当事者ではないですが、強く課題感を持たれているのはなぜですか?

最近はテレビで生理に関する特集が組まれるようになりましたが、今まで生理は女性だけの問題だと捉えられていましたよね。しかし、生理は決して女性だけの問題ではなく、社会の課題として捉えるべきであり、異性である私たちも一緒になって考えていかなければならないと思ったんです。  

また、女性は生理によっていろんな機会を逃していたり、パフォーマンスが低下してしまうことがあると感じていました。  

前職でスイミングスクールのインストラクターをしていたスタッフの経験談ですが、水着でプールに入る仕事ゆえの生理にまつわる負担を感じながら働いていたそうです。同様の負担は、インストラクター側だけでなく子どもたちの身にもふりかかっていました。 

男の子が小学校の卒業や目標達成をきっかけにして辞めていくのに対し、女の子は初経をきっかけに辞めるケースがとても多かったそうです。初経を迎えた後も通い続けている子であっても、記録会が生理の時期と重なってしまい参加できないといったケースを幾度となく見てきたと言います。

生理によって、子どもたちの可能性が閉ざされてしまうのはとても心苦しいものがあったと話していました。このビジネスを始める前に当事者の方々にヒアリングした中で、こうした男女間の身体的ギャップにより女性が抱える課題が多く、生きていく上でまだまだ大変な部分があることを知りました。  

私たちが全部を解決することは難しいですが、サービスを通して精神的な面も含めて、少しでもサポートすることができたら嬉しいです。  

「あなたによくて、社会にいいこと」社会課題の解決に繋がるインフラを構築するための工夫

OiTr利用方法

サービスの仕組みについて教えてください

まず、OiTrアプリをダウンロードしていただきます。アプリを起動して「取り出しボタン」をタップし、ディスペンサーに近づけていただくとBluetoothの通信で生理用ナプキンがスライドして出てきます。

ディスペンサーの設置場所は公式サイト、アプリから確認できます。ディスペンサーにはデジタルサイネージが設置されていて、便座に人が座るとセンサーが感知し、動画広告が流れる仕組みです。    

基本的にご利用にあたりユーザー登録が必要となりますが、前例のないサービスだけに個室トイレ内でユーザー登録するのは戸惑いもあります。女性トイレで混雑を助長してしまうようなことにならないためにも、最初の1枚目はアプリさえダウンロードしていただければ、ユーザー登録せずにすぐにご利用になれます。  

また、ナプキンは2時間毎に1度、25日間に最大7枚まで無料で使用できる仕組みになっています。  

2時間毎に1枚という設定にしたのは、生理用品メーカーなどが生理用ナプキンを2〜3時間に1度交換することを推奨しているからです。25日間は、個人差はありますが、正常な生理周期は25〜38日ということから、最短の25日に設定しています。次にいつナプキンを受け取れるかについては、アプリ内で可視化されています。  

OiTrアプリ(無料)のダウンロードはこちら  

Apple Store Google Play

ナプキンを受け取るまでの導線が非常に細かくイメージされていますね。特にこだわった点は?

2つあります。  

1つ目は、より多くの方にご利用いただくために、また必要以上に取り出されないよう対応するために、ナプキンを1枚ずつ取り出せる仕組みにしたことです。

2つ目は、です。ナプキンを取り出す際、音はほとんどありません。実証テストのアンケートにおいて、ナプキンが出てくる音が気になる方がいらっしゃり、「静かだったので安心しました」とおっしゃっていただきました。  

今まで女性が自分で購入していた生理用品を無料で提供する仕組みが作られたことで、誰かが負担しなければならないと思います。どのようにこの仕組みを構築されたのかお聞かせください

OiTrのサービスは、広告主の方々からの広告費で賄うことで、生理用ナプキンを無料で提供する仕組みになっています。  

海外では有料トイレが多く、トイレ内に広告が掲示されているところも多くあると聞いています。日本ではトイレの個室に広告を流す前例がほとんどありませんでしたが、OiTrを通じて広告はエンドユーザーである利用者にとって、また関わる企業様にとってもメリットになると考えました。  

企業様はOiTrに広告を掲出するだけでナプキンを無料で利用者に提供する役割を担うことができ、利用者はナプキンの利用の有無にかかわず広告を見ていただくことで、自らだけでなく他のナプキンを利用する方々のためになります。  

また設置側の施設様にとっても最小限の負担でお客様にサービスを提供することができ、広告費のレベニューシェアも受け取ることができます。それぞれ当事者のみなさんに経済的利益がありつつ、企業価値を高めることもでき、社会課題の解決にきちんと紐づいて関わることができる新しい仕組みです。  

このように、みなさんにとってよい仕組みをつくることが、持続してよい社会を目指すためのインフラ構築に繋がると考えます。  

「OiTr」が考えるこれからのヴィジョン

meeting

今後の目標や展開は?

まずは、47都道府県各所にできるだけ多く設置し、身近に利用できる環境を整えること。それと並行してスマートフォンを使わなくてもOiTrを利用できるようにアップデートしていくことです。次に、設置されたOiTrのインフラを活用して、さらに女性たちのQOLの向上となるサービスを提供していきたいと考えています。  

お互いの新しい価値観により社会課題の解決に弊社と取り組んでいただける設置導入企業、スポンサー企業、広告出稿企業の皆さまをオイテルでは 「ソーシャルグッド・パートナー」と称しています。これらのソーシャルグッド・パートナーと共に「必要とするすべての人に生理用品が行き届く社会」を創出していきます。  

  お問い合わせはこちら  

my-muse読者の方へメッセージをお願いします

これまでは女性だけの問題と考えていたことを、これからは1人で抱えて悩む必要はありません。  

「トイレットにトイレットペーパーが常備されているのに、なぜ生理用品はないの?」という女性の声に出会いOiTrは生まれました。その声に出会わなければ、OiTrのサービスは生まれていません。  

一人ひとりの声や行動が社会を牽引する原動力となっています。これまでの価値観にとらわれず、これからのモノサシで新しい価値観で一緒に社会を変えていきましょう。  

OiTr公式サイト Twitter:@OiTr_japan Instagram:@OiTr_japan

Profile

飯﨑 俊彦(いいざき としひこ)

「あなたによくて、社会にいいこと」をビジョンに掲げ、“社会課題をビジネスで解決する”をテーマに、オイテル株式会社を代表の小村と創業する。専務取締役COOとして「OiTr」の企画立案や事業戦略等の事業統括を担当。創業以前はデジタルハリウッド株式会社、エイベックス・グループ等のさまざまな業種で事業プロデュースに従事し数々の新規事業を手掛ける。  

◼︎Writer’s Profile

山田 萌 Moe Yamada

都内の大学4年生。デリケートゾーンケアブランド「I’m La Floria」・webメディア「my-muse」を展開するMellia株式会社のインターン。フェムテックを通して、選択肢を広げるきっかけになるようなコンテンツを発信します。    

Instagram:@_moeymd
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