女性の身体にテクノロジーで向き合う"フェムテック"とは。その意味と商品例を解説
最近耳にするようになった「フェムテック」って何のこと?詳しい意味を知りたいと思っている方のために、意味や具体例を解説していきます。日本でも近年話題になってきている、女性の身体とテクノロジーにまつわる商品やサービスについてチェックしてみてくださいね。
フェムテックとは?気になる意味や特徴を解説
①女性特有の課題を解決する商品
「フェムテック(FemTech)」とは、健康に関連する、女性特有の課題を解決する商品のことを指します。英語の「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語です。2012年に、ドイツの月経管理アプリ『Clue(クルー)』の開発者が作ったとされています。
フェムテックに該当する商品は、大きく2つに分類されます。1つ目は、ブラに挟み込むだけで、電動で母乳を搾乳してくれる『ウェラブル搾乳機』のような「製品」が該当。2つ目は、『Clue』のように、月経周期の予測に役立てられる「サービス」です。女性特有の課題を、テクノロジーの力で解決していきます。
TECHABLE 授乳する女性の強い味方に! ウェアラブル搾乳器「Elvie Pump」はスマホで操作②フェムケアも含まれる
フェムテックという概念の中には、フェムケアも含まれます。フェムケアとは、製品そのものにデジタルなテクノロジーが用いられていないアイテムのことを指します。例えば、生理用ナプキンを必要としないサニタリーショーツのような製品ですね。
フェムテックとフェムケアは、女性特有の課題を解決するという共通点を持つことから、まとめて捉えられる傾向にあります。フェムテックの一環として、フェムケアがあるという考え方です。
③日本でも世界でも急成長中の市場
フェムテック商品は、いまや日本でも世界でも急成長中の市場。2012年に誕生したとされるフェムテックですが、2019年の調査によると、世界のフェムテック市場は8億2000万ドル以上の規模に。また、今後も高い成長が予測されています。
ちなみに、フェムテック関連のスタートアップ企業は世界で200社以上あるとされています。そのうちの92%以上は、女性が中心になって設立されていることが特徴。日本においては、2020年4月の段階でのフェムテック企業は51社だったところ、11月には97社までに増加したという現象が見られます。
value pressフェムテックが求められる理由は?
①女性が声を上げやすい社会になった
フェムテックが求められるようになった理由として、女性が声を上げやすい社会になったことが考えられます。ほんの少し前までは、女性の身体や性にまつわる話題はタブー視される傾向に。
しかし、2017年に#Metoo運動が活発になったことも影響して、少しずつ変化が現れるようになりました。課題や不快感を抱いていても口に出せない社会から、大きな声を上げやすい社会に変わってきたのですね。女性が求めるものが可視化できるようになったことから、フェムテック商品の需要が高まっています。
#MeToo運動とは?②男性基準の商品開発からの脱却
フェムテックが求められる理由には、男性基準の商品開発からの脱却も関係します。これまでの商品開発は、男性中心に行われる傾向にありました。
例えば、医療分野です。ホルモンバランスの変化がある女性よりも、安定したデータが取れる男性のものを中心に、研究開発が進められてきたと言われています。そのため、女性が服用すると効きすぎる薬剤が開発されることも。医療分野以外でも様々な事例が見られます。
しかし、近年では男女の性差を意識した研究や、技術開発を進める流れに。性差に基づく技術革新という意味の、「ジェンダード・イノベーションズ」という考え方が進められています。女性の体は複雑だからこそ、女性に対する研究や開発が求められているという考え方です。
クローズアップ現代 女性の体の新常識フェムテックで社会が変わる③女性の社会進出による経済効果への期待
経済効果への期待も、フェムテックが求められる理由の一つになります。社会進出が増え、経済力がついたことから、女性の消費がアップ。「SHEconomy」と呼ばれる現象で、アメリカだけでも約7兆ドルの経済的な貢献があるとされています。女性をターゲットにした商品としてフェムテックが求められているのです。
また、働く女性の体調不良からくる経済的損失も関係が。バイエル薬品が行った調査によると、日本人女性の生理痛や月経前症候群による経済的損失は、年間6828億円にも及ぶとされています。社会進出を果たした女性が働きやすさを追求するためにも、フェムテックは求められています。
SankeiBiz 独身女性の消費が世界経済を牽引する WWD 生理の体調不良で経済的損失が年間6828億円フェムテック商品がカバーする分野は?
①月経
フェムテック商品がカバーする代表的な分野が、月経に関連するものです。生理痛や月経前症候群などの体調不良はもちろん、生理そのものの悩みも尽きることはありません。
女性が月経周期を予測して体調不良に対応したり、生理期間を快適に過ごしたりするための商品開発などが進んでいます。悩みを解消したい方は、チェックしてみると良いでしょう。
②女性の健康
女性の健康分野に関する、フェムテック商品もたくさん見られます。乳がんや卵巣がんなど、女性特有の病気の早期発見や、ヘルスケアをサポートする商品などが該当します。
もちろん、ご紹介した例はほんの一部です。まだまだ成長中の分野なので、フェムテックが一般的になるにつれて、さらに充実していくと考えられています。
③メンタルヘルス
女性のメンタルヘルスに関する分野も、フェムテック商品はカバーしています。産後うつといった、女性特有の悩みに関するメンタルケアが該当すると考えられています。
ただし、日本においては、いまだ未発達とされている分野。海外においては、オンラインカウンセリングやセラピーといったサービスが見られます。
④妊娠・出産
妊娠・出産も、フェムテック商品がカバーする分野の一つです。妊娠中に女性が安心して過ごせるためのサービスや、出産後のケアができる製品などですね。
男性基準の商品開発からでは、なかなか出にくいアイデアの商品も揃っているので、興味深いですよ。今後の、女性目線の妊娠・出産関連アイテムにも期待大です。
⑤不妊・妊孕性
フェムテック商品の中でも注目度が高いのは、不妊・妊孕性に関する分野。女性の不妊治療をサポートする製品やサービスが準備されています。
また、妊孕性とは妊娠するために必要な力のこと。唾液や息などから、妊孕性を予測できる製品もあります。さらに、不妊治療は男性側に原因があるケースも。そのため、精子の状態をセルフチェックする製品も開発されています。
⑥更年期
フェムテック商品は、女性の更年期症状に対する分野もカバーしています。40~50代に入り、ホルモンが急に減ることで不調に悩む女性も少なくありません。
症状に対処できる方法が増えるのは、働く女性にとっても嬉しいポイント。更年期に入り、不眠や疲れやすさといった不調に負けないよう、サポートしてくれます。
⑦セクシャルウェルネス
セクシャルウェルネスも、フェムテック商品の代表的な分野になります。セクシャルウェルネスとは、性の健康や満足感を意味する言葉です。
女性向けのセルフプレジャーアイテムを始め、痴漢対策のためのアイテムや、性教育にまつわるものも該当。タブー視されることが多かった分野ですが、一般的に受け入れられる時代になってきています。
【製品編】フェムテックとして開発された商品例
②月経カップ
メルーナ
月経カップ
フェムテック商品として、世界中で高い注目を集めているのが「月経カップ」。とくに欧米で愛用者が急増しているアイテムで、日本でも知名度を高めつつあります。
「月経カップ」とは、膣の中に直接入れて経血をためる生理用品のこと。シリコン素材で柔らかく、使い捨てではない点が人気の理由です。生理中も快適に過ごしやすくなるだけでなく、プラスチックフリーかつナプキンゴミの削減に繋がり、人気を集めています。
以下の記事では月経カップについてさらに詳しくご紹介しています。生理中の対応として月経カップを検討されている方は、是非読んでみてくださいね。
①吸水型サニタリーショーツ
ムーンパンツ
デイタイム ブラックレース
吸水型サニタリーショーツとは、生理用ナプキンを必要としない月経アイテムのこと。クロッチ部分の生地に特殊な加工が施され、経血を吸水してくれる仕組みになっています。
ショーツだけで大丈夫?と、心配になる方もいるかもしれませんが、普通の日用でタンポン2本ほどの吸水力があります。臭いや蒸れ対策もされていて、生理用ナプキンを使わずに快適に過ごせるアイテム。日本では月経カップよりも人気が高い傾向にあり、国産のメーカーも充実してきています。
ムーンパンツ Nagi公式オンラインストア③骨盤底筋トレーニングデバイス
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エルビートレイナー
「骨盤底筋トレーニングデバイス」は、出産や加齢による骨盤底筋の衰え対策に使われるアイテム。筋力の衰えからくる尿もれ改善が期待できます。
デバイスを膣に挿入すると、スマホと連動して、骨盤底筋トレーニングの進捗状況が提示される仕組み。トレーニングメニューも準備されていて、どの程度筋力が鍛えられたのかも確認できるようになっています。レベルアップの度合いがチェックしやすいので、モチベーションの維持にも繋がります。
【サービス編】フェムテックとして開発された商品例
①ルナルナ
『ルナルナ』とは、生理日管理ができるアプリを提供するサービスのこと。日本のフェムテックサービスのパイオニア的存在として有名で、生理日や排卵日、妊娠しやすい時期やしにくい時期といったものを予測するのに役立ちます。
サービスのスタートアップから20周年を迎えて、利用できるアプリもますます充実。基礎体温の計測アプリ、スポーツに頑張る女性のための体調管理アプリ、赤ちゃんの成長記録と妊婦さん同士の相談を可能にするアプリなどが準備されています。
ルナルナ②スマルナ
『スマルナ』は、オンラインで医師が診察・ピルの処方をしてくれるサービス。アプリをダウンロードして相談すると、「診察→ピルの提案・処方→ピルのお届け」までをワンセットで行ってくれます。
ピルの処方までいかなくても、生理や避妊、ピルについての疑問に答えてくれる、無料相談サービスも利用可能。忙しくて病院に行く時間がとれない女性に人気があるサービスです。
スマルナ③Fermata
『Fermata』は、フェムテック商品を扱う通販サイト。「あなたのタブーがワクワクに変わる日まで」をコンセプトに、色々なアイテムをオンライン販売しています。月経カップや吸水型ショーツを始め、セルフプレジャーグッズや性交痛軽減アイテムなども完備。
また、日本国内のフェムテックマーケットマップも発表していることも特徴。日本のフェムテック企業を、わかりやすくチェックすることができます。自分が必要とするアイテムを探したいときに、活用してください。
Fermataフェムテックで女性特有の悩みからの脱却を
女性特有の課題はじつに色々。フェムテック商品がカバーする分野の豊富さから、女性がこれまで口に出せなかった不便さが多かったことが窺えます。
フェムテックが普及したことで、今まで「仕方ない」で済まされてきたことにも、意外な視点から解決できる可能性が。フェムテック商品を色々チェックして、女性特有の悩みから脱却を図りましょう。
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